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住宅性能評価と長期優良住宅の違いは?実務者が悩む「同時申請」のポイント

2025年の省エネ基準適合義務化、2030年のZEH水準義務化と、建築業界は大きな節目を迎えています。住宅性能の担保の仕方、施主への提案の仕方に悩む工務店や設計事務所も少なくないのではないでしょうか。

今回は「住宅性能評価」と「長期優良住宅」という、似ているようでいて目的や実務上の扱いが異なる制度について解説します。最新の断熱基準の動向、「同時申請」のメリット、手戻りリスクの回避策についてなど実務に役立つ内容が満載です。ぜひ、最後までご覧ください。

住宅性能評価と長期優良住宅の目的と役割の違い

はじめに、制度の根拠法が異なる2つの制度について、それぞれの要点を整理します。

住宅性能評価は「健康診断書(鑑定書)」

住宅性能表示制度|一般社団法人住宅性能評価・表示協会

住宅性能評価は、「住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)」に基づき、住宅の性能を全国共通のルールで格付けする制度です。「住まいの健康診断書(鑑定書)」と考えると、理解しやすいでしょう。耐震性、断熱性、維持管理、劣化対策などの項目を、等級化して可視化します。

住宅性能評価は、第三者機関が客観的に審査し、性能を保証します。設計段階の「設計住宅性能評価」と、施工・完成段階の「建設住宅性能評価」の2段階で評価され、図面上の性能と、実際の施工品質の両面を担保できる点が特徴です。

長期優良住宅は「優良資産(認定書)」

長期優良住宅認定制度概要パンフレット(新築版)|国土交通省

長期優良住宅は「長期優良住宅の普及の促進に関する法律」に基づき、長く大切に住み継ぐための基準を満たした住宅を、自治体が認定する制度です。住宅性能評価は、住宅の設計・完成時点のスペックを測るのに対し、長期優良住宅は「将来にわたる維持管理の仕組み」までを含めて評価します。

長期優良住宅は、国が認める「優良な資産」ともいえます。税制優遇や補助金、住宅ローン金利の引き下げといった経済的メリットが大きく、施主にとって恩恵の多い制度でもあります。

住宅性能評価と長期優良住宅は「同時申請」が基本

住宅性能の評価と長期優良住宅の別々の申請は、実務効率が高くありません。工数とコストを最小化するなら、同時申請が最適です。同時申請のメリットを3つの視点から解説します。

図書作成と整合性確認の重複を排除できる

長期優良住宅の認定基準の多くは、住宅性能評価の評価基準を準用しています。そのため、住宅性能評価の図書、をそのまま長期優良住宅の申請に流用できます。

意匠図や構造図、省エネ計算書といった膨大な図書を別々に作成・管理する手間を削減でき、情報の不整合による手戻りリスクも軽減できます。

審査期間の短縮と工程管理の安定

審査機関に同時申請すると、機関による技術的審査をワンストップで受けられます。審査機関から発行される審査結果(適合証)を自治体へ提出すると、所管行政庁での認定手続きが大幅に簡略化されます。

審査工程の円滑な進行は、着工までのリードタイム短縮に直結します。「補助金の締め切りが迫っている」「スケジュールがタイト」といった現場では、とりわけメリットとなるでしょう。

審査手数料の最小化

2022年、設計住宅性能評価の申請と、長期使用構造等確認(旧・技術的審査)の申請書類が共通化され、同時申請が可能となりました。この措置を受け、多くの指定評価機関にて同時申請に「セット割引」が用意されています。割引率は10%程度が目安です。

住宅性能評価と長期優良住宅を別個に申請する場合と比べ、数万円単位でのコストダウンが期待できます。

同時申請の注意点

同時申請では、申請のタイミングに注意が必要です。長期優良住宅の認定は、原則的に「着工前」の申請(または受理)が必須となります。着工してしまうと、どれだけ性能が優れていても長期優良住宅の認定は受けられません。

一方で、住宅性能評価は着工後でも「建設評価」を受けられます。このタイミングを混同しないよう、スケジュール管理には細心の注意を払ってください。同時申請のメリットを享受するには、「確認申請・設計性能評価・長期優良住宅」を3つセットで、足並みを揃えて進めることが重要です。

【最新情報】断熱等級5(ZEH水準)必須化への備え

省エネ住宅とは|環境省「住宅脱炭素NAVI」

2026年時点で、住宅性能評価(必須項目)と長期優良住宅に対する省エネ基準は、「断熱等級5(ZEH水準)」となっています。2030年のZEH水準義務化を踏まえた基準であることは、いうまでもありません。

長期優良住宅の認定には、断熱等性能等級5に加え、一次エネルギー消費量等級も「等級6」の確保が必須です。さらに、維持管理の観点から「通気層の確保」「結露対策」も厳格に審査されます。単に断熱層を厚くしておこう、という対策では実現できない点を踏まえなければなりません。

いまからZEH義務化に向けたスケジュールを逆算し、等級5・6(HEAT20)を標準仕様とできるよう準備を進めることが、工務店や設計事務所が備えるべきポイントです。

住宅性能評価と長期優良住宅の施主にとってのメリット

両制度は、一般の方にとってはやや難解です。施主には、「申請によってどのようなお得があるか」、つまり金銭・安心等のメリットを訴求しましょう。

住宅性能評価のメリットは「万が一への備え」

住宅性能評価は、次の2軸でメリットを説明しましょう。

・地震保険料の割引が受けられる

・施工トラブルの解決を安価に依頼できる

住宅性能評価を取得した住宅は、耐震等級に応じて10%〜50%程度、地震保険料の割引が受けられます。いつか終了する住宅ローン控除と異なり、地震保険料は住む限り支払いが発生するコストです。永続的な割引を受けられると言い換えられます。

また、「建設性能評価」を受けていれば、施工トラブルがあった際、指定紛争処理機関を1万円で利用できます。本来なら数百万円はかかる弁護士費用を抑えられる、現実的な安心保証といえます。

長期優良住宅のメリットは金銭的なお得

長期優良住宅は、金銭的なメリットが多い制度です。

・住宅ローン控除の最大借入限度額の優遇

・不動産取得税や登録免許税の軽減

・固定資産税の軽減期間の延長

・フラット35Sの金利引き下げ(金利Aプラン等)の対象

長期優良住宅は、住宅ローン控除の最大借入限度額が優遇されます。新築の省エネ基準適合住宅で3,000万~4,000万円の借入限度額が、長期優良住宅では4,500万〜5,000万に増額されます。

また、不動産取得税や登録免許税の軽減、固定資産税の軽減期間の延長など、あらゆる税制で優遇される点も訴求したいポイントです。

フラット35Sの金利引き下げ(金利Aプラン等)の対象となり、返済額の圧縮も可能になります。

審査を円滑に進めるコツ

手戻りを防ぎ、申請業務を最速で進めるコツは、意匠・構造・設備をセットで管理することです。審査を円滑に進めるコツを解説します。

構造計算(耐震等級)との連動

断熱性能向上のために厚い断熱材や高断熱サッシを採用すると、建築物の自重が増加し、耐震等級の計算に影響を与える場合があります。

長期優良住宅では耐震等級3(または等級2)が必須です。断熱仕様の確定前に構造計算を進めると、後から「計算が合わない」という事態になりかねません。

設計の初期段階から構造計算と断熱仕様を連動させておくことが、手戻りを防ぎます。

設備機器の型番変更の管理

「エアコンの型番変更」「給湯器の変更」などは、現場でよく起こりまです。ただ、こうした変更がBEI値の変動を招く場合もあります。とくに、設計性能評価書・長期優良住宅の適合証の発行後に、一次エネルギー消費量計算が変わると「変更申請」が必要となることもあります。

「型番変更程度なら大丈夫だろう」と安易に判断した結果、認定基準を満たさなくなっては本末転倒です。設備仕様の変更は設計担当者に伝えること、基準値を維持できているかを即座に確認する体制を整えておきましょう。

住宅性能評価・長期優良住宅に関するQ&A

住宅性能評価・長期優良住宅に関してよくある疑問に、Q&A形式で回答します。

Q1.住宅性能評価を取得すれば、長期優良住宅も自動的に認定されますか?

A.別途「認定申請」が必要です

性能評価書は、あくまで「性能の証明書類(技術的審査の結果)」です。長期優良住宅の認定には、このほか「維持保全計画書」「居住環境への配慮」に関する書類などを揃え、所管の行政庁への申請が必要です。

Q2.増改築(リフォーム)でも長期優良住宅の認定を受けられますか?

A.可能です

既存住宅の増改築でも、一定の耐震性や省エネ性を満たせば認定を受けられる制度があります。耐震等級や省エネ性能の項目は、既存住宅の特性を踏まえ、新築とは異なる基準が設けられています。詳しくは国土交通省のパンフレットでご確認ください。

Q3.建設性能評価(現場検査)は省略してもいいですか?

A.長期優良住宅の「認定」だけであれば省略可能ですが、おすすめしません

長期優良住宅の認定は「設計評価」があれば可能です。ただし、地震保険の割引(最大50%)や住宅ローン控除の確実な適用、将来の紛争処理機能などの利用には、現場検査を伴う「建設性能評価」が求められるケースが多く見られます。

また、現場検査は「図面通りに造られているか」という施主の不安解消にも役立ちます。どうしても不可能な場合を除き、取得をおすすめします。

まとめ

住宅性能評価と長期優良住宅は、住宅の資産価値を可視化する重要な制度です。ZEH水準が標準となる現在、同時申請を軸とした効率的な申請工程を構築すれば、現場の負担を最小に抑え、施主の満足度も最大化できる施策となるでしょう。

2030年の義務化を見据え、今からこれらの制度を「標準仕様」として使いこなせる体制を整えておくことを強く推奨します。

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