CASBEEとZEBの違いは?評価項目やメリットから目的に合った選び方を解説
オフィスビルや商業施設などの環境性能を「見える化」し、建築物の資産価値向上やESG投資(GRESB評価など)の指標として不可欠となっている「グリーンビルディング認証」。 国内で主流となっている認証制度として「CASBEE」と「ZEB(BELS評価)」がありますが、プロジェクトの目的や用途によってどちらを取得すべきか(あるいは両方取得すべきか)、設計者やデベロッパーを悩ませるケースが多く見られます。
この記事では、CASBEEとZEBの目的・評価項目の根本的な違いから、テナント誘致や事業性向上に直結する実務的なメリットを整理し、プロジェクトを成功に導く最適な選び方を解説します。
CASBEEとZEBの違いとは?
CASBEEとZEBの大きな違いは、「何を軸に評価するか」というアプローチの手法と範囲にあります。
| CASBEE | ZEB | |
| 目的 | 建築物の環境性能を総合的に評価し、持続可能な建築物や街づくりを普及促進し、不動産価値を可視化する | 建築物で消費する年間の一次エネルギー収支を実質ゼロに近づけ、脱炭素化(カーボンニュートラル)を目指す |
| 運営元 | 一般財団法人 住宅・建築SDGs推進センター | (制度定義)環境省・経産省・国交省等(BELS運営)一般社団法人 住宅性能評価・表示協会 |
| 評価機関 | CASBEE評価認証認定機関 | 登録BELS評価機関 |
| 評価対象 | 住宅・非住宅・都市など | 非住宅 |
| 主な評価軸 | 環境品質(Q)と環境負荷(L)のバランス(約80の評価項目) | 一次エネルギー消費量(BEI) |
| インセンティブ | 国の直接的な補助金は少ないが、自治体による容積率緩和等の対象になる場合がある | 国の大型補助金(ZEB実証事業等)が充実。性能向上計画認定等と併用し容積率特例の対象にもなり得る |
| 有効期限 | あり(通常5年) | なし(※建築物の仕様変更があれば再評価が必要) |
CASBEEが建築物の省エネ性能だけでなく、室内環境の快適さ、景観への配慮、生物多様性など「総合的な環境品質」を幅広く評価するのに対し、ZEBは建物の高断熱化や高効率設備による「圧倒的な省エネ性能・創エネ性能」を評価することに特化した制度です。
ここからはそれぞれの特徴と評価方法を、詳しく解説します。
CASBEEとは
CASBEE(建築環境総合性能評価システム)とは、建築物の環境性能を第三者機関が評価・格付けする制度です。国土交通省の支援のもと、一般財団法人 住宅・建築SDGs推進センター(IBECs)が運営しています。
省エネ性能や環境負荷の少ない資材の採用といった「環境配慮」だけでなく、室内環境の快適性(ウェルネス)や景観への配慮など、建物の品質そのものを総合的に評価し、不動産市場における価値を分かりやすく提示できるのが最大の特徴です。
国土交通省の支援のもと、一般財団法人住宅・建築SDGs推進センター(IBECs)が運営しており、社会の情勢や需要を反映して継続的に開発やメンテナンスが行われています。
CASBEEの目的と評価範囲
CASBEEの目的は、建築物の環境性能を多角的かつ客観的に評価し、不動産市場等で建築物の価値を分かりやすく提示することです。
そのため、次の3つの理念に基づいて開発されています。
・建築物のライフサイクルを通じた評価
・建築物の環境品質と環境負荷の両側面から評価
・環境効率を指標する「BEE」で評価
上記を踏まえ、建築物のライフサイクル「企画・新築・既存・改修」に対応した評価ツールによる評価を行います。

引用:IBECs「CASBEEの概要」
CASBEEの評価対象
CASBEEの評価は住宅・非住宅、そして街や都市も対象です。
また評価対象の用途や目的に適した評価を行うため、複数のツールで構成されており、「CASBEEファミリー」と呼ばれています。

引用:IBECs「CASBEEの概要」
CASBEEの評価項目と評価方法
CASBEEの評価項目は、次の4分野です。
・エネルギー消費
・資源循環
・地域環境
・室内環境
上記4分野をさらに建築物の環境品質(Q)と建築物の外部環境負荷(L)に分類・再構成し、次の6項目で評価します。

引用:IBECs「評価の仕組みと環境効率(BEE)」
上記の評価結果を元にBEE(建築物の環境効率)を算出し、C(劣っている)・B-・B+・A・S(大変優れている)の5段階にラベリングします。

引用:IBECs「評価の仕組みと環境効率(BEE)」
CASBEEを申請する流れ
実際にCASBEEを申請する流れは、次の通りです。
①申請者がCASBEEツールで申請建築物を評価(CASBEE評価員が実施)
②申請者がCASBEE評価認証機関に概要やスケジュールなどを事前相談
③申請者がCASBEE評価認証機関に申請
④CASBEE評価認証機関の選任評価員による審査後、申請者に認証書を交付
⑤CASBEE評価認証機関が認証内容を公表
CASBEEの評価から交付までは、大体2カ月〜3カ月程度かかります。
審査後に審査機関から修正や追加資料を求められた場合は、速やかに提出しましょう。
ZEBとは
ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)とは、快適な室内環境を実現しながら、建築物で消費する年間の一次エネルギーの収支を実質ゼロにすることを目指した非住宅建築物のことです。 建物の外皮の高断熱化や高効率設備によって「省エネ(消費エネルギーを減らす)」を行い、太陽光発電などで「創エネ(エネルギーを創る)」を行うことで、エネルギー収支ゼロを実現します。認証実務においては、建築物省エネルギー性能表示制度(BELS)の評価スキームを通じてZEB認証を取得するのが一般的です。

引用:環境省「ZEBとは」
ZEBの目的
世界的な脱炭素シフトの中で、オフィスビルや工場など業務部門からのCO2排出量削減は急務です。日本政府が掲げる「2050年カーボンニュートラル」の実現に向け、非住宅のエネルギー消費量の大幅な削減を推進することがZEB化の最大の目的です。そのため、国を挙げた手厚い補助金制度が用意されています。
ZEBの評価項目と評価方
ZEBの評価指標は非常にシンプルで、「一次エネルギー消費量(BEI:Building Energy Index)」が基準となります。 空調・換気・照明・給湯・昇降機などの建築設備の設計一次エネルギー消費量を算出し、基準一次エネルギー消費量に対する割合(BEI)を求めます。 外皮(断熱)性能自体は直接的な評価指標ではありませんが、空調負荷を下げてBEIを低減させるためには、高い断熱性能を備えた建築設計が不可欠です。
削減率に応じて、「ZEB Ready」「Nearly ZEB」「『ZEB』(完全ZEB)」などに分類され、BELSの星マークと共に証明ラベルが交付されます。
ZEBの対象建築物
ZEBの対象建築物は、工場やオフィスビルなどの非住宅です。
住宅や共同住宅などの住まいは、ZEHの対象です。
ZEBの評価項目と評価方法
ZEBの評価項目は一次エネルギー消費量で、空調・換気・照明・給湯・昇降機などの建築設備のエネルギー消費量の合計をBEIで算出します。

引用:環境省「ZEBの定義」
外皮などの断熱性能は評価の対象外ですが、一次エネルギー消費量を削減するためには断熱性能の向上が必須です。
設計一次エネルギー消費量が基準一次エネルギー消費量よりも小さいほど、省エネ性能の高い建築物だと評価されます。
ZEBを申請する流れ
ZEBを実現する流れは、次の通りです。

引用:「公共建築物におけるZEB事例研究」
ZEB実証事業など国の助成制度を利用する場合、年度初めに公募が始まるため、前年度には
ZEB認証を取得しておく必要があります。
ZEB認証を受けると、ZEB認証を証明するラベルが交付されます。

引用:国土交通省「建築物の省エネ性能表示制度」
CASBEEとZEBはどっちを取得するべき?
どちらの認証を取得すべきかは、プロジェクトの目的、ターゲットとなるテナント層、事業収支(イニシャルコストとランニングコスト)などを総合的に検討し、デベロッパーや施主が得られる事業的メリットから逆算して判断する必要があります。
CASBEEのメリット
ESG投資やGRESB評価でのアピール力が高い
不動産証券化(REIT)や機関投資家からの評価において、総合的な環境認証であるCASBEEは強力な経営ツールとなります。
ウェルネスの証明によるテナント誘致力の向上
労働環境の快適性も評価されるため、入居企業の生産性向上や健康増進(健康経営)に寄与するビルとして、高い賃料設定や優良テナントの誘致に直結します。
多様な開発スケールに対応可能
単体の建物だけでなく、街区開発や都市開発といった大規模なマスタープラン全体の価値向上を証明できます。
ZEBのメリット
光熱費(ランニングコスト)の大幅な削減
設計段階からの徹底した省エネ・創エネにより、運用時の光熱費を劇的に削減できます。余剰電力の売電収益も事業収支に好影響を与えます。
手厚い国の補助金・支援制度の活用
環境省や経産省が主導する大型のZEB実証事業補助金などを活用することで、導入時のイニシャルコスト増をカバーすることが可能です。
容積率緩和などの法的インセンティブ
省エネ性能の高さを示すことで「建築物エネルギー消費性能向上計画認定」等を受けやすくなり、設備機械室等の床面積不算入(容積率緩和)といったデベロッパーにとって非常に魅力的なメリットを享受できるケースがあります。
CASBEEやZEBなどグリーンビルディング認証の経営ツール価値が向上
2015年の国連サミット以降、ESG投資の考え方が国内不動産市場にも深く浸透し、環境配慮を怠る不動産は「ブラウン・ディスカウント(環境性能が低いことによる資産価値の下落)」を招くリスクが高まっています。 特に大きな転換点となるのが法規制の強化です。
2025年4月からは原則として全ての新築建築物に「省エネ基準の適合」が全面義務化されます。さらに国は、2030年度には新築建築物に求められる省エネ基準そのものを「ZEB水準」まで引き上げる方針を掲げています。
また、自治体によっては一定規模以上の建築計画においてCASBEE(自治体版)に基づく環境配慮計画書の提出を義務付けています。 今後、非住宅建築物においてグリーンビルディング認証を取得することは、「付加価値」から「必須の前提条件」へとスタンダードが変わっていくでしょう。
CASBEEとZEBでよくある質問2選
ここでは、CASBEEとZEBでよくある質問を2つ解説します。
CASBEEやZEBを取得するタイミングは?
CASBEEやZEBを取得するタイミングに決まりはありませんが、省エネ適合判定と同時に行うとスムーズです。
自治体でCASBEEの提出が義務付けられている場合は、着工の21日前など申請機関が定められているため、各自治体の公式サイトを確認しましょう。
ZEBで国の補助金を活用する場合は、着工前の設計段階で取得する必要があります。
CASBEEとZEBは同時に取得ができる?
はい、並行して取得することは十分に可能ですし、近年は双方のメリットを享受するために同時取得を目指すケースが増えています。
例えば、2025年10月に星野リゾートが発表した「リゾナーレ下関(2026年秋開業予定)」では、国内ホテルとして初めて「ZEB Ready認証」と「CASBEE建築評価認証(Sランク)」の同時取得を達成しました。 設計段階から排水熱や海水を活用するなどの先進的な環境技術を導入することで、ZEBの優れた省エネ設計がCASBEEの「エネルギー消費」や「資源循環」の項目で高得点につながるという相乗効果を生んでいます。
ESG経営において競合物件と圧倒的な差別化を図り、不動産価値を最大化したい場合には同時取得が非常に有効な戦略となります。
まとめ
CASBEEもZEBも建築物の環境性能の高さを示し、持続可能な社会づくりへ貢献を果たしている証明になるため、ステークホルダーからの信頼を得るのに有効な手段です。
その中でも高い省エネ性能を求めるならZEB、総合的に環境性能の高い建築物を目指すならCASBEEを選択しましょう。
建築物の環境性能を証明するには、複雑で専門的な省エネ計算や省エネ設計が不可欠です。
設計業務に集中するためにも、省エネ計算は経験の豊富な代行業者への外注がおすすめです。
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