省エネ適判とZEBの違いは?実務を高める考え方のポイントを解説
建築物の環境負荷軽減をめざす施策や制度は、増える一方です。
近年は省エネ基準対応に加えて、建築物のライフサイクル全体(資材調達〜解体)でのCO2算定=「建築物LCA」の制度化も検討が進んでいます。国交省等では2028年度を目途に制度開始を目指す方針が示されており、今後は“省エネ+LCA”で実務が増える前提で体制整備が必要です。
環境負荷軽減の施策が多方面にわたって増え続け、混乱する現場もあるのではないでしょうか。今回は「省エネ適判」「ZEB」に注目し、相違点や共通点、実務を円滑に進めるポイントなどを解説します。
省エネ適判とZEBの概要
はじめに、省エネ適判とZEBの概要をあらためて確認します。
省エネ適判とは


省エネ適判(適合性判定)は、法令(建築物省エネ法)が定める省エネ性能を満たしているかを判定する制度です。2025年4月より、建築物の面積・用途(住宅/非住宅)にかかわらず、すべての新築建築物で省エネ基準適合が義務になりました。一方で、「省エネ適判(第三者判定)が必要か/省略できるか」は規模・用途・確認手続等で分岐するため、計画初期に要否を確定させるのが実務の起点です。
省エネ適判が必要な建築物では、適判通知書が建築確認手続に組み込まれるため、通知書がないと確認が進まず、結果として着工できません。
まずは「本件が適判対象か」を先に判定し、クリティカルパスに組み込むのが安全です。
ZEBとは

ZEBは、建築物の年間一次エネルギー消費量について、省エネで削減しつつ創エネも活用して、収支ゼロ(※区分により削減率要件)を目指す建築物の考え方(性能定義)です。
実務では「ZEB/Nearly ZEB/ZEB Ready/ZEB Oriented」の区分要件(削減率、面積要件、複数用途時の扱い等)を前提に整理します。
省エネ適判とZEBの共通点・相違点
続いて、省エネ適判とZEBの共通点、および相違点を解説します。
省エネ適判とZEBの
共通点
※ 2023年度の温室効果ガス排出量及び吸収量(概要)|環境省
省エネ適判とZEBは、「エネルギー使用効率が高く、環境負荷の低い建築物の普及」という共通目的を持っています。
日本は、2050年のカーボンニュートラル達成をめざし、産業部門ごとに温室効果ガスの排出量抑制を図っています。省エネ性能の高い建築物の増加は、建築物からの温室効果ガス排出量減少に貢献し、長期的に地球温暖化対策に寄与します。
省エネ適判とZEBの相違点
省エネ適判は、「判定」という名称からわかる通り、建築物の性能が基準を満たしているかのチェック制度です。一方、ZEBは制度ではなく、性能定義(区分)です。省エネと創エネによって年間のエネルギー収支をゼロにできる性能を持った建築物を、ZEBと呼びます。
省エネ適判は、法に基づき省エネ基準への適合性を確認する判定手続です。
一方ZEBは、一次エネ削減等の要件で区分される性能定義(区分)となります。
【ポイント】省エネ適判とZEBは計画段階から考慮する
実務で一番コストが増えるのは、審査そのものより「前提条件の後出し」で計算モデルが作り直しになるケースです。用途区分、運用時間、空調方式、外皮仕様の“前提”を基本設計で凍結し、以降の変更は「影響範囲」と「変更手続き」をセットで管理すると、手戻りが激減します。
省エネ適判、そしてZEBの補助金利用には、どちらも申請が必要です。書類図書の準備や申請など、煩雑な実務が発生します。実務効率向上には、建築物の計画段階から「省エネ適判とZEBを考慮して」進行することが重要です。
省エネ適判とZEBの準備のコツや最新動向、実際の申請の流れを解説します。
省エネ基準適合は原則義務/適判の要否は条件で変わる

※ 【建築物省エネ法第11・12条】 適合性判定の手続き・審査の合理化について|国土交通省
先に解説した通り、2025年4月以降、原則としてすべての新築建築物で省エネ基準への適合が求められます。ただし、適合の確認手続き(省エネ適判の要否や省略可否)は建築物の条件や確認手続きと連動するため、計画初期に「この案件は“適判が必要か/省略できるか”」を確定させることが実務の起点になります。
適判の要否・簡素化は、条件で変わる
省エネ基準適合は原則義務ですが、省エネ適判の要否や審査の簡素化(仕様基準等)は、建築物の条件・確認手続と連動します。
たとえば、仕様基準で適合確認を行う住宅など、審査合理化の対象となるケースがあります。実務では「確認申請の前に、適判の要否を確定」させ、手戻りを防ぐのがポイントです。


同時に、いわゆる「4号特例」も縮小されました。旧4号建築物は「新2号」「新3号」に2分され、建築確認・検査および審査省略制度の対象が変更になっています。新2号に該当する建築物は、構造関係規定図書や省エネ関連図書の提出も求められるようになっています。
とくに戸建/小規模案件でも、確認申請の“添付図書の準備工数”がボトルネック化しやすいので、基本設計の段階で外皮・設備の前提を固め、計算条件のブレを減らすのが有効です。
詳細を正しく把握し、間違いなく申請できるよう、計画的な進行が重要になります。
2030年までに、新築建築物のZEB適合が目指されている

建築分野の省エネ対策を推進するため、政府は急ピッチで建築物のZEB・ZEH化を進めています。政府方針として、2030年度以降に新築される住宅・建築物で、ZEH・ZEB水準の省エネ性能確保を目指す方向性が示されています。
したがって新築プロジェクトでは、「適判対応=最低限」ではなく、将来の基準引上げも見越した“ZEB水準の設計前倒し”が、デベロッパー・施主の投資判断に直結します。
これから計画する建築物は、ZEB水準の性能搭載が前提になると考え、性能確保のための仕様を確認し、省エネ計算等の業務をスピーディに進める準備が必要です。
なお、ZEBは建築物の全体と部分のどちらを評価するかによって、要件が変わります。
〈例〉
ZEB/Nearly ZEB/ZEB Readyで複数用途建築物の一部用途のみを評価する場合、対象部分での一次エネルギー消費量削減率に加え、建築物全体で「基準値から20%以上の一次エネルギー消費量削減(創エネ除く)」の達成が必要
計画段階での省エネ適判とZEBの考え方
建築物の計画に当たり、まず必須である省エネ適判のスケジュール把握が重要です。一定規模以上の建築物や公共建築物は、省エネ適判の提出が建築確認手続の条件となるケースもあります。
同時に、ZEBを採用するなら、性能と仕様のシミュレーションを進めます。省エネ適判のための設計とZEBを実現できる仕様を整理しておきましょう。計画段階で必要書類と性能・仕様を正確に把握しておくと、採用する計画を判断する材料としても活用できます。
省エネ適判とZEBを計画し、申請するまでの流れ
省エネ適判とZEBを計画し、申請するまでの流れをまとめました。
1. 設計
エネルギー計算モデルを作成し、省エネ適判とZEBの条件を整理する
2. 専門家や第三者による検証
必要に応じてプロのサポートを得、条件を満たす設計か確認する
円滑な進行のため、省エネ計算等の外注も検討する
3. 資料や図書の用意
資料や図書は膨大な数に上るため、確実に準備する
4. 申請、審査
審査に必要な期間を見積もり、逆算しゆとりを持って申請する
5. 修正対応
計画の修正を指示されたら、速やかに対応する
6. 計画確定
7. 施工チェック(完了検査)
計画通りに施工されているか、品質は良いか確認する
なお、設計通りの施工か確認するチェックに通らないと、検査済証が交付されません。
施工中に省エネ計画へ影響する変更が生じた場合は、内容に応じて軽微変更(ルート判定)または変更適判等の手続きが必要になります。
省エネ適判とZEBの申請機関
省エネ適判とZEBは、申請先が異なります。それぞれの申請先を解説します。
省エネ適判の申請機関
省エネ適判は、登録省エネ判定機関に申請します。登録省エネ判定機関とは、「省エネ適判を実施できる組織である」と、国に登録された民間機関です。
計画地域の登録省エネ判定機関は、住宅性能評価・表示協会のホームページで検索できます。
ZEBの申請機関
ZEBで申請が必要なのは、補助金を利用する場合です。ZEBの補助金を使用しない計画であれば、特段の申請は不要です。
ZEB関連の補助金は、環境省や一般社団法人 環境共創イニシアチブ(SII)、地方自治体等が実施しています。それぞれの窓口に申請してください。
なお、多くのZEB補助金は、公募期間等のスケジュールが定められています。また、補助金予算が年度上限に達すると締め切りとなるため、早めの申請が必須です。
省エネ適判とZEBに関するQ&A
省エネ適判とZEBに関して、よくある疑問にQ&A形式で回答します。
Q1. 適判申請に使った書類の保管期間は、どのくらいか
適判通知書(写し)や判定に要した図書は、関係規程上15年保存を基本線として扱われます。申請経路や運用は自治体・機関で差が出ることがあるため、最終的には所管行政庁/判定機関の指示に従いつつ、事業者側の文書管理は「15年」を標準にしておくのが安全です。
Q2. 適判通知書の交付から完了検査までの期間に、建築主や設計者に変更があった場合の手続きは、どのようになっているか
建築主・設計者の変更自体は、通常は省エネ性能を変えないため省エネ適判の再判定は不要となることが一般的です。ただし、確認申請・完了検査の運用(名義変更、委任状、連絡体制など)は機関・自治体で扱いが分かれるため、確認検査機関/所管行政庁へ早めに相談し、必要書類の差替え有無を確認してください。
Q3. ZEBの対象とならない建築物には、どのようなものがあるか
ZEBの対象外建築物(補助金を利用できないケース)は、以下の通りです。一例のため、詳しくは専門家にお問い合わせください。
・分譲マンション
・複数建築物を一団の建築物としての申請
・国の他の補助制度と重複しての申請
・補助事業以外での使用も想定される建築物
・建築物で使用する汎用性の高い備品や標準性能機器 など
Q4. 設計費はZEBの補助対象となるか
ZEB補助金事業のために必要な設計に限り、補助対象となる場合があります。ただし、補助金交付決定より前に契約した設計業務は、補助対象外です。
まとめ
省エネ適判は、建築物が基準を満たす省エネ性能を持っているかを判定する制度です。一方ZEBは、建築物の年間一次エネルギー消費量について、省エネ・創エネの組み合わせにより削減率(BEI等)の要件で区分される性能定義(ZEB/Nearly ZEB/ZEB Ready/ZEB Oriented)です。
建築業界の省エネ化推進に伴い、今後計画される建築物は省エネ適判に加え、ZEB水準の採用も増えていくと考えられます。円滑なスケジュール進行のために情報の整理を進め、必要に応じて外部の専門家のノウハウ活用も検討してみてください。
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