【2026年度版】長期優良住宅の新基準を徹底解説|新築戸建の約5割が取得する理由
令和7年度の新設住宅着工において、新築一戸建て住宅における長期優良住宅の認定割合は49.8%に達し、いまや「2戸に1戸」が取得する事実上の標準仕様(スタンダード)となりました。 税制優遇の最大化や高額な補助金(みらいエコ住宅2026等)を背景に、長期優良住宅の取得は単なる品質証明にとどまらず、ビルダーやデベロッパーにとって「選ばれる商品設計のための必須要件」となっています。
一方で、省エネ基準の引き上げや2025年法改正後の構造計算・壁量見直しなど、設計現場が直面する計算・申請実務の負荷はかつてないほど増大しています。
本記事では、設計者やゼネコン、デベロッパーの皆様に向けて、2026年度における最新の認定基準(耐震・省エネ・維持保全)、取得による事業メリット、そして着工遅延を防ぐ申請実務のポイントをプロ目線で徹底解説します。
新築戸建ての約5割が認定取得。二極化が進む住宅市場
国土交通省の公表データによると、新築一戸建て住宅における長期優良住宅の認定戸数は年々増加し、令和7年度には認定実績が15万5,000戸超、着工戸数に対する割合は49.8%(約2戸に1戸)に達しました。
住宅ローン減税の優遇枠拡大や子育て世帯向け補助金の要件化を受け、大手ハウスメーカーのみならず地域工務店・パワービルダーにおいても「長期優良住宅の標準化」が急速に進んだ結果といえます。

引用:一般社団法人住宅性能評価・表示協会「長期優良住宅の認定制度の概要について」

引用:国土交通省「長期優良住宅の認定状況について」
【デベロッパーが注目すべき「共同住宅」の現状】
一方で、同年度の共同住宅等における認定割合はわずか2.4%(9,433戸)に過ぎません。住戸面積基準(40㎡以上)や共用配管の維持管理対策など設計上の制約が多いことが要因ですが、逆を言えば「分譲マンションや賃貸アパートで長期優良住宅を取得できれば、競合他社に対して圧倒的な商品差別化とESGプレミアムを獲得できるブルーオーシャン」であることを示しています。
長期優良住宅とは
長期優良住宅とは、ひとつの住宅に長く良好な状態で住み続けるために必要な建築・維持保全に関する計画に基づいて施工された住宅です。
具体的には、次の5つの措置を講じます。
・長期に使用するための構造及び設備を有している
・居住環境等への配慮を行っている
・一定面積以上の住戸面積を有している
・維持保全期間、方法を定めている
・自然災害への配慮を行っている
認定期間は「長期優良住宅の普及の促進に関する法律」に基づき、長期優良住宅の要件を満たしているか審査します。
対象建築物
長期優良住宅の認証を受けられるのは、新築・既存の一戸建て住宅と共同住宅です。
既存住宅では2016年に増改築を対象とした認定が始まり、2022年に建築行為を伴わない認定も開始されました。
申請の流れと「着工前申請」の厳格な法的ルール
実務上は、登録住宅性能評価機関による事前の「技術的審査(確認書等の交付)」を経て、所管行政庁へ本申請を行うルートが一般的です。

引用:一般社団法人住宅性能評価・表示協会「長期優良住宅の認定制度の概要について」
- 登録住宅性能評価機関へ「長期使用構造等であるかの確認」を申請
- 評価機関より「確認書」または「設計住宅性能評価書(長期使用構造等確認結果記載)」を受領
- 所管行政庁へ「認定申請書」を提出(※必ず工事着工前に提出!)
- 所管行政庁より「認定通知書」の交付
⚠️【実務上の絶対厳守ルール:着工後の申請は不可】
長期優良住宅法第5条の定めにより、所管行政庁への認定申請(上記③)は「工事着工前」に行わなければなりません。工事が1日でも着工した後に認定申請を行うことは法的に不可能であり、いかなる救済措置もありません。
なお、行政庁への「申請書受理」が着工前に行われていれば、認定通知書(上記④)の交付前に着工することは制度上可能ですが、万が一の設計是正リスクを回避するため、交付後の着工を標準工程とするのが安全です。
【最新】長期優良住宅の新基準と9つの認定基準
長期優良住宅の認定項目は9つあり、そのうちいくつかは2022年と2025年の長期優良住宅法改正で新基準が定められました。
ここでは新基準を中心に、長期優良住宅の認定項目を解説します。
エネルギー消費性能
2022年10月より、長期優良住宅に求められる省エネ性能は一次エネルギー消費量等級6以上に引き上げられました。
| 一次エネルギー消費量等級 | 省エネ基準からの削減率 | 備考 |
| 等級8 | ▲35% | 2025年12月新設 |
| 等級7 | ▲30% | |
| 等級6 | ▲20% | ZEH水準・誘導基準 |
| 等級5 | ▲10% | |
| 等級4 | 0 | 省エネ基準 |
2025年にほとんどの住宅で省エネ基準への適合が義務化されるなど、近年住宅の省エネ性能の高さが重要視されており、長期優良住宅も「長持ち」に加えて「高い省エネ性能」を備える必要が生じたためです。
断熱性能
断熱性能も一次エネルギー消費量と同じく、2022年10月より断熱等級が5以上に引き上げられました。
具体的な基準は、地域によって異なります。

引用:国土交通省「ラベル項目の解説」

引用:国土交通省「ラベル項目の解説」
こちらもエネルギーをできるだけ消費せずに、長く快適に住み続けられる居住環境が求められるようになったためです。
耐震基準:法的要件は「等級2以上」、実務実態は「耐震等級3」がデファクトスタンダード
長期優良住宅の法律上の認定基準は、制度創設以来一貫して「耐震等級(倒壊等防止)2以上、または品確法に定める免震建築物」等と規定されています。 評価ルートとしては、「品確法に基づく性能表示計算(壁量・床倍率等)」または「許容応力度計算(構造計算)」のいずれかを選択可能です。
| 評価手法 | 特徴 | 実務における位置づけ |
| 性能表示計算(壁量・水平構面計算) | 品確法の基準に基づき、耐力壁量や配置バランス、床倍率を検証する手法。 | 木造2階建て等で広く採用されるが、複雑な間取りや大開口では制限を受けやすい。 |
| 許容応力度計算(構造計算ルート) | 柱・梁・基礎の応力を部材1本ごとに詳細検証する精緻な計算手法。 | 自由度の高い意匠設計やスキップフロア等に対応可能。「許容応力度計算による耐震等級3」は最も信頼性の高いブランドとなる。 |
【2025年建築基準法改正との関係】
2025年4月の法改正では、重量化した住宅(高断熱材や太陽光パネル搭載)の倒壊を防ぐため、建築基準法本法(等級1相当)の必要壁量基準が見直されました。 これに伴い、長期優良住宅の法定要件(耐震等級2以上)を満たすための計算数値も、新基準法の壁量規定と整合する形にアップデートされています。
法律上の最低基準は「耐震等級2」ですが、地震保険の最大割引(50%)の適用要件やエンドユーザーの安全志向、大手ハウスメーカーとの競合を考慮すると、現在の実務現場では「耐震等級3」での取得が圧倒的な主流となっています。
その他の認定項目
新築における長期優良住宅の認定項目は、次の通りです。

引用:一般社団法人住宅性能評価・表示協会「長期優良住宅の認定制度の概要について」
住宅の構造躯体を長く保つための劣化対策や、構造躯体に比べて耐用年数が短い部材に対する維持管理・更新の容易性、快適に暮らすために必要な住戸面積など、ZEHや低炭素住宅のような省エネ性能に特化した住宅にはない、長期優良住宅ならではの項目が多数あります。
長期優良住宅を取得するメリット・デメリット
長期優良住宅を取得するメリット・デメリットを、施主にわかりやすい形で解説します。
メリット|国が認定した「優良住宅」で資産価値が向上する
前述してきた通り長期優良住宅は、構造躯体を長く使い続けられる劣化対策や、地震に強い耐震性能、一年中快適に過ごすための省エネ性能など、数世代にわたり良質な住宅に住むための性能が備わっています。
そのため子や孫に、正の資産として引き継ぐことが可能です。
また国が認定した優良住宅なので中古市場でも需要が高く、売却時にも有利に働きます。
デメリット|30年以上の点検義務がある
長期優良住宅を取得する際に説明しておくべきデメリットは、30年以上の点検義務がある点です。
設計や竣工時に条件を満たしているだけでなく、入居後に維持保全計画に基づいて10年ごとの点検や記録の保存を実行することも認定条件に含まれています。

引用:一般社団法人住宅性能評価・表示協会「長期優良住宅の認定制度の概要について」
点検や修繕を怠ると認定の取り消しや税金の還付を求められるリスクがあるため、必ず維持保全計画に従いましょう。
【2026年度】長期優良住宅で受けられる4つの優遇措置
2026年度に長期優良住宅の認証を受けると、得られる優遇措置を4つ解説します。
住宅ローン控除と借入限度額の引き上げ
長期優良住宅は省エネ性能に優れた住宅として、住宅ローン減税を受けられます。

引用:国土交通省「住宅ローン減税」
長期優良住宅は、借入限度額・控除期間どちらも最大限の恩恵を受けられるのが魅力です。
固定資産税や不動産取得税の軽減
住宅ローン減税の他にも、固定資産税、登録免許税、不動産取得税の軽減が適用されます。
| 対象 | 特例内容 |
| 固定資産税 | 一般的住宅よりも減税措置が2年間延長される |
| 登録免許税 | 所有権保存登記が一般住宅よりも0.05%以上引き下げられる |
| 不動産取得税 | 不動産取得税の控除額が一般住宅より100万円増額される |
長期優良住宅を取得したら自動で恩恵が受けられるわけではないため、それぞれ都道府県や市町村が定めるところに申告しましょう。
みらいエコ住宅2026事業などの補助金制度
長期優良住宅は、国内の良質な住宅のストック形成を図るために設けられた「みらいエコ住宅2026事業」の対象です。
支給条件を満たすと、地域ごとに次の補助金額が交付されます。

引用:みらいエコ住宅26事業「事業概要」
交付申請期間は申請開始日から遅くとも2026年12月31日までで、予算の上限である1,450億円に達した時点で締め切られます。
確実に支援を受けたい場合は、早めに申請を行いましょう。
地震保険の割引
長期優良住宅は耐震等級2以上が必須基準のため、地震保険で下記いずれかの割引が適用されます。
| 等級 | 割引率 |
| 耐震等級2 | 30% |
| 耐震等級3 | 50% |
| 免震建築物 | 50% |
地震保険料は近年改定が続いており、年間保険料の50%割引は施主にとって生涯にわたり数十万円単位の維持コスト削減につながる強力なセールストークとなります。
長期優良住宅でよくある質問2選
ここでは長期優良住宅でよくある質問を2つ解説します。
長期優良住宅にして後悔する原因は?
長期優良住宅を取得して後悔する一因は、増改築やリフォームの度に長期優良住宅の認定申請を行う必要がある点です。
申請を行わずに工事を行ったり、増改築によって長期優良住宅の基準を満たせなくなったりすると、認定を取り消されてしまう恐れがあるため注意しましょう。
なお、増改築後の認定建築等計画が認定基準に適合することが明らかである「軽微な変更」の場合、行政庁によっては変更届が不要です。
判断に迷う場合は、事前に所管行政庁に確認しましょう。
長期優良住宅は後から取得できる?
長期優良住宅認証は、後から取得可能です。
2022年より、新築や増改築などの建築行為をしていない住宅でも「建築行為なし認定制度」により認定を受ける機会が与えられました。
新築後に増改築せず認定を受ける場合は「新築基準」、増改築後や長期優良住宅制度の創設前に新築された住宅は「増改築基準」が認定基準です。

引用:国土交通省「建築行為なし認定制度の認定基準について」
まとめ:長期優良住宅の「標準化時代」を勝ち抜く設計・申請の外注戦略
新築戸建ての約5割が認定を取得する現在、長期優良住宅への対応はもはや「差別化」ではなく、住宅事業における「参入障壁・必須インフラ」となりました。 一方で、断熱等級5+一次エネ等級6をクリアするための精緻な外皮・設備計算や、耐震等級3を満たす構造計算(許容応力度計算等)、維持保全計画書の策定など、設計現場にかかる業務量は従来とは比較にならないほど肥大化しています。
「計算業務で意匠設計の時間が削られている」「審査機関との質疑往復で確認申請が遅れ、着工に間に合わない」という課題を根本から解消するためには、「構造計算・省エネ計算から評価機関・行政庁への申請までを一括代行できる専門会社」の活用が極めて有効です。 外部の専門リソースを戦略的に組み込み、最小限の社内工数で確実な認定取得と工期遵守を実現してください。
省エネ計算なら、しろくま省エネセンターにお任せください!
しろくま省エネセンターでは、業界初の「省エネ計算返金保証」を行っております。
個人住宅、小規模事務所から大型工場などまで、幅広く対応しています。
まずはお気軽にご相談ください!