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GXとは?カーボンニュートラルとの違いやGX志向型住宅の申請方法を解説

地球温暖化や資源の枯渇などの環境課題を改善し、持続可能な社会システムを構築する取り組みであるGX(グリーントランスフォーメーション)。

「先生、GX志向型住宅って何ですか? 補助金が使えるって聞いたんですが…」最近、施主からこんな質問をされてドキッとしたことはありませんか?

調べたいけれど、設計業務に追われてなかなか時間が取れない…

そんな設計者の方に向けて、この記事では GXの基本と建築業界での動き、GX志向型住宅の特徴や補助金の最新情報 をわかりやすくまとめました。

施主からの信頼を高めるための知識整理に、ぜひお役立てください。

GXって結局、施主にどう説明すればいい?

GXとはグリーントランスフォーメーションの略称で、地球温暖化対策を経済成長の機会と捉え、温室効果ガスの削減と経済成長の向上を両立させて、経済社会システムの変革に結びつけようとする活動です。

国内では行政を中心に、さまざまな企業が使用エネルギーを化石燃料からクリーンエネルギー中心に切り替える等、GXの考えに賛同した取り組みを実施しています。

GXはなぜ必要?

近年、温室効果ガスによる地球温暖化や資源の枯渇などの環境問題を解決するため、脱炭素を目指した持続可能な社会づくりが求められています。

国内でも2050年までにカーボンニュートラルの実現を掲げており、環境問題の改善と経済成長の向上を両立できるGXが重要視されるようになりました。

特に国内におけるGXの実現は、産業革命から続く化石エネルギー中心の産業・社会構造をクリーンエネルギー中心へ転換し、環境への配慮だけでなく、世界各国で発生している燃料価格の高騰に対抗する手段としても重要視されています。

引用:経済産業省「我が国のGX実現に向けて

GXとDXの違いとは

DXとはデジタルトランスフォーメーションの略称で、デジタル技術を利用した社会の変革です。

企業がデジタル技術を駆使して、業務プロセスやビジネスモデルを根本的に変革することで、顧客や社会のニーズに応えることを目指します。

GXとDXのどちらも社会に変革を起こそうとする活動ですが、GXの変革方法が温室効果ガスの排出量削減なのに対し、DXはデジタル技術の発展であるのが違いです。

GXとカーボンニュートラルの違い

カーボンニュートラルは、CO2など温室効果ガスの排出量から植林や森林管理などによる吸収量を引いて、温室効果ガスの排出量の実質ゼロを目指す取り組みです。

カーボンニュートラルはGXを構成する要素のひとつで、カーボンニュートラルの実現に向けた取り組みが、GXの達成につながります。

建築業界におけるGXへの取り組み

建築業界におけるGXへの取り組みとして、住宅・建築物の抜本的な省エネの実現に向けた、建築物省エネ法等による規制の対象範囲拡大・強化があります。

2030年までに実現を目指す、主な目標や戦略は次の4つです。

・ZEH、ZEB水準の省エネ性能の新築住宅、建築物の普及

・省エネリフォームの拡大

・断熱窓等の建材における省エネ基準の強化、導入の促進

・木造建築物の普及拡大

参照:経済産業省「GX実現に向けた今後の取り組み

上記の取り組みを反映した住宅のひとつとして、2025年度から「GX志向型住宅」が設けられました。

ここではGX志向型住宅について、詳しく解説します。

GX志向型住宅とは

GX志向型住宅とは、行政が省エネ基準の引き上げの目標にしているZEH水準よりも高性能な、脱炭素志向型住宅です。

基本的なGX志向型住宅とZEH住宅の省エネ水準は、次のとおりです。

省エネ性能GX志向型住宅ZEH住宅
断熱性能等級等級6以上等級5以上
一次エネルギー消費量削減率(再エネ除く)35%以上20%以上
一次エネルギー消費量削減率(再エネ含む)100%以上100%以上

さらにGX志向型住宅は、住宅で使用するエネルギーの流れを消費者が自ら把握して監理するための「高度エネルギーマネジメント(HEMS)」の導入が求められます。

GX志向型住宅とZEH住宅の違い

GX志向型住宅とZEH住宅の違いは、省エネ性能の水準とHEMS導入の有無です。

どちらも住宅で消費するエネルギーの実質ゼロを目指す取り組みですが、前述したとおり、GX志向型住宅はZEH住宅よりも省エネ水準が高いうえ、HEMSの導入が必須条件です。

GX志向型住宅と長期優良住宅の違い

GX志向型住宅が住宅で消費するエネルギーの実質ゼロを目的とした住宅なのに対し、長期優良住宅は長期にわたって良好な状態で住み続けるための措置が講じられた、優良な住宅です。

そのため長期優良住宅では、次のような要件があります。

・長期に使用するための構造及び設備を有している

・居住環境等への配慮を行っている

・一定面積以上の住戸面積を有している

・維持保全の期間、方法を定めている

・自然災害への配慮を行っている

具体的には耐震等級や劣化対策、維持管理・更新の容易性などが認定基準として設けられています。

GX住宅にすると、施主はこんなに得をする

ここではGX志向型住宅を選ぶことで消費者が得られるメリットを、3つ解説します。

環境にも人にも優しい住宅づくりがかなう

GX志向型住宅は地球温暖化などの環境問題に配慮するだけでなく、住む人が健康で快適な毎日を過ごすための設計にも配慮しているのがメリットです。

家全体を包み込む断熱構造は、外気の熱が室内に伝わりにくいうえ、エリアごとの温度差で生じるヒートショックなどの健康リスクを抑えられます。

自然と人が無理なく共存していける社会づくりのために、大切な役割を果たす住宅だといえるでしょう。

光熱費を削減できる

省エネ住宅は、電気やガスなどのエネルギー源の使用を抑えられるため、光熱費の削減につながります。毎月の請求書を見るたびに、ちょっとした安心感を得られます。

例えば東京でZEH水準の太陽光パネル付き住宅を建てた場合、省エネ基準の住宅と比較して、年間8万円程度安くなると試算されています。

引用:国土交通省「家選びの基準変わります

※試算例であり、条件によって異なります。

ZEH水準以上の省エネ性能のあるGX志向型住宅なら、より高い光熱費削減効果が期待できるでしょう。

資産価値が高まる

省エネ性能の高い住宅は中古住宅市場で一定の評価を得やすく、長く資産価値を維持できる傾向があります。

将来的に売却する可能性がある場合はもちろん、子ども世帯や孫世帯に受け継いでいく資産としても魅力的な住宅といえるでしょう。

GX志向型住宅を選ぶ際の注意点

GX志向型住宅は高性能な断熱材や再エネ設備の導入が必要なため、初期コストが高くなりがちです。

ただし、ここを補助金や支援制度とセットで提案できるかどうかが、設計者の信頼を左右するポイントです。

GX志向型住宅の要件を満たすには、高性能な断熱材や太陽光発電システムの導入等が必要になります。

要件を満たせるほど再エネを生成できるソーラーパネルの設置には、100万円以上かかるケースもあるため、補助金とセットで提案するのが設計者の腕の見せ所です。

【2025】GX志向型住宅が利用できる補助金制度

2025年度にGX志向型住宅を建築する際に利用できる補助金制度として、子育てグリーン住宅支援事業があります。現行制度では、GX志向型住宅は特例的に全世帯を補助対象に含む 形での位置づけですが、GX志向型住宅専用の補助制度ではありません。

ここでは、子育てグリーン住宅支援事業について解説します。

子育てグリーン住宅支援事業とは

子育てグリーン住宅支援事業とは、燃料費や物価高騰の影響を受けやすい子育て世代や若者世帯が、ZEH水準以上の省エネ住宅を手に入れやすくするために設けられた支援事業です。

新築住宅を購入する際の補助対象と補助額は、次のとおりです。

引用:子育てグリーン住宅支援事業「事業概要

子育てグリーン住宅支援事業は名前のとおり、子育て世帯や若者夫婦世帯を支援するのが目的ですが、GX志向型住宅だけはすべての世帯が支援対象になります。

申請の条件

新築の一戸建てでGX志向型住宅の支援制度を利用する場合、次の6つの条件を満たす必要があります。

①証明書などで住宅の性能を確認できる

②建築主が居住する

③床面積が50㎡以上240㎡以下

④立地条件が下記に該当しない

引用:子育てグリーン住宅支援事業「新築住宅の立地等の除外要件

⑤未完成もしくは完成から1年以内で、居住の用で使用していない

⑥2026年1月31日時点で、基礎工事後の工事の出来高が補助額以上

申請の流れ

補助金を受けるための申請の流れは、次のとおりです。

引用:子育てグリーン住宅支援事業「申請手続きの詳細

申請手続きには、「住宅省エネポータル」でアカウントを取得する必要があります。

GXでよくある質問2選

ここでは、GXでよくある質問を2つ解説します。

GX志向型住宅の申請はいつまで?

GX志向型住宅の補助金申請の期限は、申請開始から予算上限に達するまで、遅くとも2025年12月31日までです。

なお2025年8月現在、GX志向型住宅は予算上限に達したため受付を終了しています。

※本記事執筆時点では受付終了。最新情報は公式サイトをご確認ください。

引用:子育てグリーン住宅支援事業「予算に対する補助金申請額の割合

2026年度にも同様の補助金制度が設けられるかは定かではありませんが、利用したい場合は早めの申請が無難です。

GX志向型住宅は太陽光発電なしでも可能?

基本的にGX志向型住宅は、再生可能エネルギーを生成できる太陽光発電システム等が必要です。

しかし多雪地域や都市部狭小地など、太陽光発電が十分に望めない地域では再生可能エネルギーの要件が緩和されます。

子育てグリーン住宅支援事業における多雪地域は、建築基準法施行令第86条の規定により、特定行政庁が定める垂直積雪量100㎝以上に該当する地域です。

都市部狭小地は、下記のいずれかに該当し、敷地面積が85㎡未満の敷地(平屋を除く)である地域が該当します。

・第一種または第二種低層住宅専用地域

・第一種または第二種中高層住宅専用地域

・田園住居地域

・条例により北側斜線規制が定められている地域

まとめ

GXは、環境保全と経済成長の両立を目指し、化石エネルギーからクリーンエネルギーへの転換を推進するための施策として、国内だけでなく世界中で注目されている取り組みです。

GXは国策であり、建築業界全体を動かす流れです。

その中で「GX志向型住宅」を理解し、施主にわかりやすく説明できる設計者は、確実に選ばれる存在になるでしょう。

GX志向型住宅を選ぶことは、光熱費の節約や快適な暮らしにつながるだけではありません。子どもや孫の世代に、より持続可能な社会を残していく行動でもあるのです。

補助金制度を活用したい場合は、省エネ計算や申請業務を代行業者へ外注すると、申請がスムーズに進むでしょう。

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