長期優良住宅と低炭素住宅の違いは?それぞれの概要やメリット・デメリットを解説
近年、すべての建築物で省エネ基準への適合が義務化されるなど、環境問題の解決や持続可能な社会づくりに向けて省エネ性能の高い住宅の普及が促進されています。
その中で「長期優良住宅」や「低炭素住宅」の認定取得は、物件の付加価値向上や補助金スキームの活用において不可欠となっています。
しかし、施主の予算や要望、敷地条件に対して「どちらの認定を提案・選択すべきか」、最適解の判断に頭を悩ませている設計者やデベロッパーも多いのではないでしょうか。
そこでこの記事では、長期優良住宅と低炭素住宅の特徴や違い、目的に適した選び方を解説します。
長期優良住宅と低炭素住宅は何が違う?
近年環境に配慮した住宅の需要が高まっており、長期優良住宅と低炭素住宅が環境性能に優れた住宅だという認識は拡大しています。
しかし、両者の基準の違いやコストパフォーマンス、そして設計実務における負荷の差までを正確にハンドリングし、施主へ明確な根拠(エビデンス)を持って打ち出せているケースは多くありません。
2つの制度の主な概要と違いは、次の通りです。
| 長期優良住宅 | 低炭素住宅 | |
| 目的 | 良質な住宅を次世代に引き継ぐための必要な措置を講じる | 地球温暖化の原因であるCO2の削減 |
| 背景 | 「量よりも質」だった日本人の住宅への意識を「良質な家に長く住む」へ転換 | 世界的な地球環境問題への対策 |
| 評価項目 | ・省エネ性能・劣化対策・耐震性能・可変性・メンテナンス性 など | ・省エネ性能・創エネ設備の有無・低炭素化を実現する設備の有無 |
| 一次エネルギー消費量等級 | 等級6以上(ZEH水準) | 等級6以上(ZEH水準) |
| 断熱性能等級 | 等級5以上(ZEH水準) | 等級5以上(ZEH水準) |
| 申請時期 | 着工前 | 着工前 |
| 省エネ適判の省略 | 〇 | 〇 |
| 有効期限 | なし(計画に沿った点検を怠ると認定を取り消される恐れあり) | なし |
簡潔に説明すると、良質な住宅に必要な条件を網羅しているのが長期優良住宅、省エネ性能に特化しているのが低炭素住宅です。
ここからはそれぞれの特徴について、詳しく解説していきます。
長期優良住宅とは
長期優良住宅とは、何世代にもわたり良好な状態で使用し続けるために必要な措置が講じられた住宅です。
新築・既存住宅が対象で、「長期優良住宅の普及の促進に関する法律」に基づいて作成した「住宅の建築・維持保全に関する計画」を認定します。
具体的には、次の5項目が講じられている住宅です。
①長期に使用するための構造及び設備を有している
②居住環境等への配慮を行っている
③一定面積以上の住戸面積を有している
④維持保全の機関、方法を定めている
⑤自然災害への配慮を行っている

引用:住宅性能評価・表示協会「長期優良住宅とは」
長期優良住宅がつくられた背景
長期優良住宅が制定されたのは、「つくっては壊す」のフロー消費型の社会から「いいものを長く丁寧に使う」というストック型社会への転換が必要だったためです。
戦後以降の日本は、経済成長や人口の増加によって次々に住宅が建てられたうえ、「住宅を購入するなら新築」という考えが強く、利用期間は平均30年と短い期間で取り壊されていました。
しかし地球環境問題の深刻化や少子高齢化に伴う福祉負担の増大により、持続可能な社会づくりが注目され、住宅も「良質なものを、きちんと手入れして次世代に引き継いでいく」という方針になり、2009年6月に長期優良住宅が制定されました。
長期優良住宅の認定基準
長期優良住宅の認定基準は、新築と既存で異なります。
例えば新築の認定基準は、次の通りです。

引用:住宅性能評価・表示協会「長期優良住宅認定制度の概要について」
劣化対策や耐震性、省エネ性、可変性等、長く安心して住み続けられる住宅を次世代まで残せるような性能項目・認定基準が設けられています。
長期優良住宅を取得する流れ
長期優良住宅を取得する流れは、次の通りです。

図1
所管行政庁への申請は着工前までに行う必要があるため、工事をスムーズに進めるためにも早めに準備を進めましょう。
また長期優良住宅は、認定を受けた後も維持保全を行うための定期的な点検を実施し、必要に応じて調査・修繕・改良を行い、その内容を記録して保存することも必須条件です。

引用:住宅性能評価・表示協会「長期優良住宅認定制度の概要について」
維持保全を怠ると認定を取り消される恐れがあるため、認定時に提出した維持保全計画書通りに実施しましょう。
長期優良住宅で使える補助金・税金の控除
長期優良住宅の認定を受けた住宅は、次のような恩恵を受けられます。
| 概要 | |
| 建築時の補助金 | 「みらいエコ住宅2026事業」で1戸につき75万円~100万円の補助金が受けられる |
| 住宅ローン金利の引き下げ | フラット35の借入金利を当初5年間最大0.75%引き下げられるフラット35sを利用できる |
| 住宅ローン限度額の引き上げ | 住宅ローンの借入限度額を最大5000万円まで引き上げ |
| 税の特例措置 | 住宅ローン限度額の引き上げ、所得税控除、登録免許税の引き下げ、不動産取得税控除、固定資産税の減税措置などが受けられる |
| 地震保険料の割引 | 耐震等級2で30%、耐震等級3で50%。免振建築物で50%の割引が受けられる |
低炭素住宅とは
低炭素住宅とは、住宅に暮らすことで発生するCO2を減らすために、低炭素化の措置が講じられた住宅です。
「都市の低炭素化の促進に関する法律(エコまち法)」で定められており、「低炭素以下のための建築物の新築等計画」を作成し、次の基準に適合する場合に認定されます。
①建築物のエネルギー消費性能が省エネ基準を超え、誘導基準に適合する
②都市の低炭素化の促進の基本方針に適している
③資金計画が低炭素化を遂行するために適切である
低炭素住宅がつくられた背景
低炭素住宅は、地球温暖化対策や東日本大震災などでエネルギー使用の効率化や削減が求められ、建築物の低炭素化を促進するために制定されました。
そのため低炭素住宅は、省エネ性能の高さに特化しています。
低炭素住宅の認定基準
低炭素住宅の認定基準は、次の通りです。
①省エネ法の省エネ基準よりも一次エネルギー消費量が-20%以上
②再生可能エネルギー利用設備の導入
③省エネによる削減率と再エネで得られるエネルギー量の合計値が基準一次エネルギー消費量の50%以上(一戸建て住宅のみ)
④その他低炭素住宅に資する措置を講じている
①〜③は必須項目で、④は選択項目からひとつ以上講じる必要があります。

引用:住宅性能評価・表示協会「低炭素住宅とは」
低炭素住宅を取得する流れ
低炭素住宅は、登録住宅性能評価機関等で技術的審査を受けてから所管行政庁に認定申請を行います。

引用:住宅性能評価・表示協会「低炭素建築物新築等計画の認定申請をされる皆様へ」
認定通知書が交付されると省エネ基準以上の性能があると判断され、省エネ適判を省略することができます。
低炭素住宅で使える補助金・税金の控除
2026年度に低炭素住宅で使える助成制度は、次の通りです。
| 概要 | |
| 建築時の補助金 | 「みらいエコ住宅2026事業」で1戸につき35万円~60万円の補助金を受けられる |
| 住宅ローン限度額の引き上げ | 住宅ローンの借入限度額を最大5000万円まで引き上げ |
| 税の特例措置 | 住宅ローン控除、登録免許税控除 |
長期優良住宅と低炭素住宅はどっちが得?
長期優良住宅は長く安全な住宅に安心して住み続けたい人、低炭素住宅は省エネ性能の高さで電気代等を大幅に削減したい人に需要が高い制度です。
それぞれのメリットやデメリットを具体的に解説するので、住宅の性能や予算に適した制度を活用してください。
長期優良住宅のメリット・デメリット
長期優良住宅は、構造の安定から省エネ性、維持管理まで住宅性能をフルパッケージで網羅しているため、「高品質な住宅」としてデベロッパーやゼネコンが自社物件のブランド力を明確に訴求しやすい点が大きなメリットです。
また、「みらいエコ住宅2026事業」をはじめとする高額な補助金や潤沢な税制優遇を活用できるため、施主への強力な営業フック(キラーコンテンツ)になります。
一方、引き渡し後も「維持保全計画」に基づく定期点検や修繕記録の保存が義務付けられるため、施主にとっては管理の手間となりますが、事業者にとってはOB顧客との長期的なリレーション構築や、アフターメンテナンス受注の商機として捉えることも可能です。
低炭素住宅のメリット・デメリット
低炭素住宅は省エネ性能(一次エネ消費量削減)に特化しているため、長期優良住宅のような劣化対策や可変性といった構造・維持管理系の厳格な基準がなく、間取りや仕様における設計の自由度を担保しやすいのがメリットです。
ただし、原則として「市街化区域内」等の建築物に限定されるほか、一戸建てでは太陽光パネル等の再エネ設備が必須となるため、設備コストが想定外に嵩むリスクがあります。耐震性やバリアフリー性などは自社基準で担保する必要があり、利用できる補助金額も長期優良住宅に比べると低めに設定されています。
長期優良住宅と低炭素住宅の違いでよくある質問2選
ここでは、長期優良住宅と低炭素住宅の違いでよくある質問を2つ解説します。
長期優良住宅と低炭素住宅は両方取得できる?
長期優良住宅と低炭素住宅を、両方取得することは可能です。
ただしどちらも認定には手数料等がかかり、補助金等はどちらか一方のものしか利用できない可能性が高いため、コストよりもメリットが上回る場合におすすめします。
低炭素住宅とZEHの違いは?
ZEH住宅は、省エネ性能で削減したエネルギーと創エネで生成したエネルギーを組み合わせて、住宅で使うエネルギーを実質ゼロにすることを目指した住宅です。
低炭素住宅も長期優良住宅もZEH水準の省エネが必要ですが、創エネに関する基準は設けていません。
まとめ
長期優良住宅も低炭素住宅も、地球温暖化対策や限りある資源を有効活用するために欠かせない制度です。
2050年のカーボンニュートラル実現や持続可能な社会づくりに貢献するために、建築業界が積極的に促進していく姿勢が求められています。
ZEH水準が実質的な標準となった現代において、これらの複雑な外皮計算や一次エネルギー消費量計算、および膨大な申請図書の作成は、設計者やデベロッパーの限られたリソースを激しく逼迫させる要因となっています。
タイトな工期の中で着工を確実かつスムーズに進め、本来のコア業務である「プランニング(意匠設計)」「施工管理」「事業企画」に優秀な人材を集中させるためには、煩雑な省エネ計算や申請業務を信頼できる外部の専門機関へアウトソーシングすることが、これからの建築実務における最も合理的な戦略と言えるでしょう。
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