【2026年版】CASBEEウェルネス不動産(WR)とは?評価項目・認証の考え方とウェルネスオフィス(WO)との違い
近年、国内外で持続可能な社会づくりが重要視されており、建築物の環境性能を評価するCASBEEの需要が高まっています。
CASBEEファミリーの中でも、働く人の健康性・快適性や知的生産性といった“ウェルネス価値”に着目した評価ツールとして、「CASBEEウェルネス不動産」が検討・整備されています。制度の位置づけや評価の考え方は、公開されている評価マニュアル等の一次情報を前提に整理することが重要です。
そこでこの記事では、CASBEEウェルネス不動産の概要や評価項目をわかりやすく解説します。
今後の展望についても記載しますので、CASBEEウェルネス不動産に興味がある方は参考にしてください。
CASBEEとは
CASBEEとは、建築物の環境性能を評価して格付けするのを目的とした手法で、建築物環境総合性能評価システムとも呼ばれます。
省エネ性能の高い設備や環境負荷の少ない資材を使用して自然環境に配慮するだけでなく、室内の快適性や健康性など人が過ごしやすい環境づくりも含めた建築物の環境性能を総合的に評価するのが特徴です。
CASBEEは建築物の用途や評価の目的に合わせて、複数の評価ツールがあります。

引用:IBECs「CASBEEの概要」
上記のツールに加え、不動産マーケットでの活用を想定したウェルネス評価として、CASBEE-ウェルネス不動産(CASBEE-WR)の評価マニュアル(試行版)が公開されています。評価の考え方や項目体系は公開資料に基づいて整理することが重要です。
CASBEEウェルネス不動産とは
CASBEEウェルネス不動産とは、既存ビルやテナントをオフィスとして利用する際の不動産価値を評価するのを目的に、現在開発が進められている評価ツールです。
不動産マーケットの関係者が手軽に建築物のウェルネス性能を評価・格付けできる仕組みで、将来的な方向性として、評価マニュアル(試行版)でも「評価結果が不動産鑑定基準に反映されることを目指す」旨が示されています(※制度運用は今後変更の可能性あり)。
検討の背景
CASBEEウェルネス不動産ツール開発の目的は、既存のオフィスビル等のウェルネス的価値を手軽に評価できる市場づくりです。
先に導入されたCASBEEウェルネスオフィスは、働く人の健康性・快適性や知的生産性、安心・安全などを幅広く扱う一方で、評価の観点が多岐にわたるため、実務上は必要図書の確保や整理に手間がかかりやすい側面があります。
そのためCASBEEウェルネス不動産は、不動産マーケット関係者が短期間で扱いやすいよう、ウェルネスオフィスの考え方をベースに項目を整理・絞り込んだツールとして位置づけられています。
CASBEEファミリー(建築系)における、CASBEEウェルネス不動産の立ち位置は次の通りです。

引用:IBECs「CASBEEウェルネス不動産 評価マニュアル」
CASBEEウェルネスオフィスの評価ツールを主軸に、CASBEE不動産の経済性評価項目の重要項目のみを組み合わせて開発されています。

引用:IBECs「CASBEEウェルネス不動産 評価マニュアル」
CASBEEウェルネスオフィスとの違い
CASBEEウェルネスオフィス(WO)とCASBEEウェルネス不動産(WR)の大きな違いは、評価設計の前提(用途・活用者)と、それに伴う項目体系の整理度合いです。WRは不動産マーケットでの短期評価・比較を想定し、公開資料では「3つの大項目・8つの中項目・合計25の小項目」として整理されています。
基本的にはCASBEEウェルネスオフィスと同じく、オフィスで働く人の健康性や知的生産性、安心・安全など労働環境の向上を重要視しています。
CASBEEウェルネス不動産は、CASBEEウェルネスオフィスの考え方を踏まえつつ、不動産マーケットでの活用を想定して、評価観点を整理・絞り込んだツールです。評価項目数の表現は資料の版や整理方法(抽出・相関の文脈)で揺れが出やすいため、本稿では「評価マニュアルで示されている項目体系」に基づいて記載します。
また利用者を不動産事業者や不動産ファンド事業者等と見込み、自社ビルでの対策で重視される専有部の対策等は最低限に収め、不動産事業で重要なサービス面をメインに取り入れています。
CASBEE不動産との違い
CASBEEウェルネス不動産はオフィスで働く人の健康面や快適性に配慮した項目がメインで、CASBEE不動産はエネルギー効率、省資源、室内環境など建築物の環境性能を重要視しているのが違いです。
CASBEE不動産は、環境負荷を低減する不動産としてアピールしたい場合に利用されます。
CASBEEウェルネス不動産を評価する項目
CASBEEウェルネス不動産の評価項目は、公開資料(評価マニュアル等)で整理されている項目体系に基づきます。なお、資料内では「ウェルネスオフィスの多岐にわたる観点から主要項目を抽出して整理した」旨の説明もあり、抽出・相関の文脈で項目数が言及されることがあります。本稿では、読者が混乱しないよう「評価項目(制度として整理されている項目)」と「抽出・相関のための整理(説明上の項目)」を分けて扱います。

引用:IBECs「CASBEEウェルネス不動産 評価マニュアル」
CASBEEウェルネスオフィスとCASBEE不動産から、安心・安全に働くために不可欠な耐震性能やセキュリティ設備、そして健康で快適に過ごすために必要な環境性能を評価する項目を厳選しています。
CASBEEウェルネス不動産の採点基準
採点は、項目ごとに5段階評価で行います。
例えば「躯体の耐震性」の評価項目では、建築物全体の耐震性能を建築基準法で要求している耐震性能に対する割増率で評価し、次のようにランク付けしています。

引用:IBECs「CASBEEウェルネス不動産 評価マニュアル」
「躯体の耐震性」は、建物全体の耐震性能を、建築基準法で要求される耐震性能に対する割増率等の考え方で段階評価する項目です。したがって評価以前に、当該建物が現行法上の適法状態か(既存不適格の有無を含む)、および現状の耐震性能がどの水準にあるかを、根拠資料(設計図書・構造計算書・耐震診断結果等)で確認することが前提になります。評価の文脈では、低い水準に該当する場合は、まず適法性・安全性の観点から是正や改修検討が必要になります。
各評価項目の5段階評価をもとに総合得点を算出し、CASBEEウェルネス不動産の総合評価を決定します。
CASBEEウェルネス不動産を申請する流れ
実際に不動産を評価する際の流れについて、現時点(2026年2月)で確認できる内容を元に解説します。
【実務メモ:まず揃える根拠資料(例)】
・意匠図(平面・断面・仕上表)、設備図(空調・換気・衛生)、防災計画/避難計画
・構造関係資料(構造計算書、耐震診断結果、Is/If等)
・管理運用資料(点検記録、測定記録、運用ルール、非常時マニュアル等)
※評価は資料確認とヒアリングで進むため、設計図面+運用記録の両輪で準備すると手戻りが減ります。
評価対象の建築物
評価対象は、竣工後1年以上経過した既存オフィスです。
基本的にオフィス用途で利用、賃貸を行う建築物の評価を想定しています。
評価ツール
CASBEEウェルネス不動産は、評価の考え方や項目体系を示す資料(評価マニュアル等)が公開されており、マニュアルに沿って根拠資料を整理しながら評価を進めることが想定されます。
ただし、現時点では試行段階の扱いであるため、第三者認証の受付方法や提出書類、費用、審査フローなどの制度運用は、今後変更される可能性があります。最新の制度運用(受付可否・必要書類・費用等)は、IBECs/JSBC等の公式発表を都度確認するのが確実です。
申請の流れ
CASBEEウェルネス不動産は試行段階のため、正式な受付・審査フローは今後変更される可能性があります。本稿では、読者が実務で検討しやすいよう、一般的なCASBEE認証の進め方(事前準備→根拠資料の整理→評価→申請→審査→認証)を参考フローとして示します。実際の受付条件・必要書類・審査手順は、IBECs/JSBC等の最新の公式案内に従ってください。

引用:IBECs「CASBEEウェルネスオフィス評価認証」
CASBEEウェルネス不動産で評価を受ける3つのメリット
CASBEEウェルネス不動産で評価を受けるメリットを、2025年の試行時に行われた実証分析の結果を元に3つ解説します。
オフィスやテナントで働く人が健康で快適に過ごせる
CASBEEウェルネス不動産は、オフィスやテナントで働く人の健康や生産性向上を主軸にした制度です。
室内の空気を快適に保つシステムや騒音対策など直接的に体の健康を損なう要素の排除だけでなく、運動を促進できる環境やコミュニケーションを取りやすい空間づくりなど、様々な視点からの快適な環境配慮が求められます。
そのため働く人の心身のストレスが減り、離職率の低下や知的生産性の向上が期待できます。
テナントの空室率改善や賃料プレミアム効果が期待できる
ウェルネス性能の“見える化”は、テナント誘致や賃料形成における説明力を高める可能性があります。公開されている分析では、評価スコアの上昇と賃料プレミアムの関係が推計されている一方で、空室率は立地・築年・市況など外部要因の影響も大きいため、単純に「スコアが高いほど空室率が下がる」と断定せず、賃料・競争力(採用/定着・ブランド)面の説明材料として整理するのが実務的です。
ESG経営の企業として投資家にアピールできる
ESG経営(Environment / Social / Governance)は、企業の持続可能な成長や中長期の企業価値向上の観点で重視されており、投資判断にも影響します。CASBEEウェルネス不動産のように、働く人の健康性・快適性や知的生産性に関わる要素を“見える化”できる指標は、テナント・投資家に対する説明責任(ディスクロージャー)の観点でも活用余地があります。
CASBEEウェルネス不動産で評価を受ける際の注意点
前述してきた通りCASBEEウェルネス不動産は試行段階のため、実証分析の結果で評価項目や評価基準は変更する可能性があります。
興味や関心がある場合は、今後正式に公表されるツールや概要を元に利用を検討しましょう。
また、耐震性能やBCP(事業継続)性能を高めようとすると、計画(スペース・内装・設備)や工期・コストに制約が出る場合があります。すべての項目で満点を狙うのではなく、物件の狙い(テナント属性/投資方針/改修余力)に合わせて優先順位を付けて改善することが重要です。
CASBEEウェルネス不動産はどんなケースにおすすめ?
CASBEEウェルネス不動産は、不動産マーケット関係者が不動産をオフィスとして貸し出す際におすすめの評価です。
不動産マーケットとは、不動産会社・ビルオーナー・仲介業者・投資家・金融・不動産鑑定士などが該当します。
自社のビルを自社の従業員が利用する場合は、CASBEEウェルネスオフィスが適しています。
またオフィスやテナントを修繕・改築する際に、不動産価値を向上させるための指標としても役立つでしょう。
【2026年】CASBEEウェルネス不動産の今後の展望
現在は試行段階のCASBEEウェルネス不動産ですが、オフィスで働く人々の健康や生産性を支えたり、不動産価値を証明したりする投資要素として本格的に開発・普及が進められるでしょう。
不動産マーケットに関わる事業者は、今後の動向を追っていくことをおすすめします。
まとめ
CASBEEウェルネス不動産は、オフィスで働く人々の健康や生産性の向上を評価するCASBEEウェルネスオフィスの簡易版で、評価項目を絞ることでより手軽に不動産価値を評価できるツールとして試行されています。
働き方やオフィスのあり方が多様化する現代に必要な指標として、今後も開発・普及が進められていくでしょう。
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