住宅性能評価の必須項目とは?効率よく取得するための4つのコツも解説
住宅の品質を第三者が客観的に評価する「住宅性能評価」は、建売・注文住宅を問わず、物件の資産価値や信頼性を高めるために欠かせない制度です。一方で、2025年4月施行の省エネ基準適合義務化や4号特例の縮小に伴い、評価取得のための計算・申請業務は複雑化し、設計現場の負担はかつてないほど増大しています。
本記事では、設計者やデベロッパーの皆様に向けて、住宅性能評価における「必須項目」の最新基準を整理し、確認申請等と絡めた実務的なメリットを解説します。さらに、着工遅延を防ぎ、効率よく評価書を取得するための3つの実践的なコツをお伝えします。
住宅性能評価とは
住宅性能評価とは、「住宅の品質確保の保身等に関する法律(品確法)」に基づき、省エネ性や耐震性など住宅の性能を第三者が客観的に評価する制度です。
国が定めた共通の基準で評価し、結果を等級や数値で表すことで専門知識のない消費者でも容易に品質の良い物件を選択できる市場づくりを目指して制定されました。

引用:住宅性能評価・表示協会「新築住宅の住宅性能表示制度について」
評価は国や都道府県知事の登録を受けた「登録住宅性能評価機関」です。
登録住宅性能評価機関は、住宅性能評価・表示協会の公式サイトから検索可能です。
住宅性能評価には、2つの評価書があります。
・設計住宅性能評価書
・建設住宅性能評価書
それぞれの特徴を、詳しく解説します。
設計性能評価書とは

引用:国土交通省「新築住宅の住宅性能表示制度ガイド」
設計住宅性能評価書とは、設計図面や仕様書を元に住宅の設計段階での性能基準を評価するものです。
設計住宅性能評価書を取得すると、評価を受けた設計書通りに施工された場合の住宅性能が保証されます。
ただし竣工後の住宅の性能を保証する力はないため、施工後の保証を求める場合は建設性能評価書も取得しましょう。
建設性能評価書とは

引用:国土交通省「新築住宅の住宅性能表示制度ガイド」
建設性能評価書とは、設計住宅性能評価書を取得した設計図面や計算書に基づいて施工されているかを評価し、性能基準を保証するものです。
施工〜完成の間に4回程度現場で検査し、設計図面通りに施工されていた建築物のみ交付されます。
建設性能評価書は設計性能評価書を取得した建築物のみ、評価の対象です。
住宅性能評価の性能表示事項と必須項目
住宅性能評価は、10の分野と33の性能表示事項があります。
項目数は多いですが、必須項目以外は必要な事項のみ選択することが可能です。
ここでは性能表示事項の内容について、詳しく解説します。
10の分野と33の性能表示事項
住宅性能評価の分野と性能表示事項は、次の通りです。

引用:住宅性能評価・表示協会「新築住宅の住宅性能表示制度かんたんガイド」
耐震性や耐火性など万が一の災害に備えた性能や、温熱環境・空気環境・光・視環境など環境や住む人に配慮した性能など幅広い分野が設けられています。
必須項目は4分野10項目
住宅性能評価には必須項目と選択項目があり、必須項目は次の4分野10項目です。

これら必須項目は、次の理由で必須化されています。
①住宅購入者からの関心が特に高い
②完成後や引き渡し後に確認や調査が難しい重要性能である
住み始めてからは簡単に見ることができず、直すことも難しい部位の品質を担保することが目的です。
住宅性能評価を取得する5つのメリット
ここでは、住宅性能評価を取得するメリットを5つ解説します。
第三者が認める良質な住宅を取得できる
住宅性能評価は、国土交通大臣が認める登録住宅性能評価機関が行います。
設計や施工に携わらない第三者が評価することで、客観的で信頼性の高い良質な住宅を手に入れることが可能です。

引用:住宅性能評価・表示協会「住宅性能表示制度について」
設計士やディベロッパーなど住宅の供給者も、自社製品の品質の良さを明確に主張できるようになり、健全な市場づくりの形成につながるでしょう。
施主の予算に応じたVE提案と、販売時の付加価値向上
住宅性能評価は、必須項目(構造・劣化・維持管理・省エネ)以外の項目については、施主の要望や予算に合わせて取得する等級を柔軟に選択・除外できます。 デベロッパーやビルダーにとっては、「耐震等級3と断熱等性能等級6を取得し、他社物件と明確に差別化する」といった販売戦略の強力なツール(第三者のお墨付き)になります。専門知識のない施主に対しても、住宅の品質を数値で分かりやすくアピールできるため、成約率の向上に貢献します。
2025年義務化対応:建築確認や省エネ適合審査の「合理化」に直結する
2025年4月より、原則すべての新築住宅で省エネ基準適合が義務化されました。
住宅性能評価を取得する過程で、登録住宅性能評価機関による審査を並行して受け、「設計住宅性能評価書」(または長期優良住宅の「長期使用構造等である旨の確認書」など)の交付を受けるルートが実務上極めて有効です。これらの書類(または間に合わない場合の宣言書)を建築確認申請に添付することで、独立した省エネ適合性判定(適判)の審査が省略・一本化され、審査期間の短縮や行政手数料の削減につながります。
住宅ローン金利引き下げなどの恩恵が受けられる
住宅性能評価のように質の高い住宅を取得する場合、住宅ローンを借りる際に「フラット35S」を利用できます。
フラット35は民間金融機関と住宅金融支援機構が提携して提供する全期間固定金利の住宅ローンで、フラット35Sではフラット35よりも低い金利で借入が可能です(当初5年間のみ)。

引用:フラット35「フラット35S」
他にも耐震等級に応じた地震保険料の割引や贈与税の非課税枠の拡大など、イニシャルコストの軽減に役立つ恩恵が用意されています。
万が一の際に紛争処理を申請できる
建設住宅性能評価書を取得した住宅は、国土交通大臣が指定する住宅紛争処理機関に紛争処理を依頼することが可能です。

引用:住宅性能評価・表示協会「新築住宅の住宅性能表示制度かんたんガイド」
工事の欠陥、契約内容の食い違いなどでトラブルが生じた場合、弁護士や建築士などの専門家が間に入って中立な立場で解決までサポートします。
住宅性能評価をスムーズに取得するための4つのコツ
住宅性能評価の申請準備は省エネ適判や建築確認と並行して行うため、手間取ってしまうと他の業務に支障が出る恐れがあります。
そこで、住宅性能評価をスムーズに取得するためのコツを4つ解説します。
設計住宅性能評価書を活用して省エネ適判を省略する
前述した通り、設計住宅性能評価書を建築確認時に申請することで、省エネ適判を省略することが可能です。
さらに設計住宅性能評価と建築確認の審査を同じ機関へ同時に申請すれば、設計住宅性能評価書の受け渡しが機関内部で簡潔するうえ、意匠図と省エネ計算書の整合性の確認を同じ担当窓口でまとめて行えるため、効率的です。
着工1カ月前には申請を行う
設計住宅性能評価の審査には、申請から約2週間〜1カ月程度かかります。
提出書類の不備や混雑状況によっても左右されるので、最低でも着工の1カ月前には申請しましょう。
コストや性能のトレードオフを知る
設計住宅性能評価は評価項目が多く、全てを取得しようとすると施工費用も審査手数料も高額になってしまいます。
また耐震性で高レベルを目指すと窓の大きさに制限がかかり、採光で高レベルが取得できないなど、全ての項目で高い性能を求めることも非常に困難です。
求める性能に優先順位をつけ、予算内で実現できるレベルを選ぶなど折り合いをつけましょう。
代行会社に申請を外注する
住宅性能評価の申請は代行会社に依頼することで、複雑な計算や申請の手間を省けます。
省エネ適判と住宅性能評価の申請代行を扱っている代行もあるため、両方まとめて相談することもおすすめです。
住宅性能評価でよくある質問3選
ここでは住宅性能評価でよくある質問を、3つ解説します。
住宅性能評価の取得にかかる費用相場は?
住宅の規模や審査機関によって異なりますが、延床面積100〜150㎡の一般的な戸建て住宅の場合、評価機関へ支払う審査手数料は、設計評価・建設評価合わせて20万〜30万円程度が相場です。
また、計算書作成や申請手続きを外部の代行会社へアウトソーシングする場合、図面の複雑さにもよりますが10万〜20万円程度の外注費が発生します。一見コストに見えますが、社内の設計士が不慣れな作業に何日も費やす見えない人件費(学習コストや質疑対応の時間)と比較すると、代行会社を活用した方がプロジェクト全体のトータルコストは安く収まるケースがほとんどです。
住宅性能評価書はあとから取得できますか?
原則的に新築住宅の住宅性能評価書は、あとから取得できません。
住宅性能評価は、建築時にしか確認できない部位の評価も行うことが理由です。
建築後や既存住宅は、「既存住宅性能評価書」の対象になります。
長期優良住宅との違いはありますか?
住宅性能評価も長期優良住宅も良質な住宅を評価する制度ですが、目的や評価項目が異なります。
| 住宅性能評価 | 長期優良住宅 | |
| 目的 | 住宅の品質と性能を客観的な数値で分かりやすく示し、消費者が安心して優良な住宅を選びやすい市場の形成を目指す | 長く良好な状態で使用するための措置を講じることで、限りある資源を大切にし、国民の住宅資産形成を目指す |
| 評価項目 | ・構造の安定・火災時の安全・劣化の軽減・維持管理、更新への配慮・温熱環境、エネルギー消費量・光、視環境・音環境・高齢者等への配慮・防犯 など | ・劣化対策・耐震性・維持管理、更新の容易性・省エネルギー性・居住環境・維持保全計画・災害配慮 など |
長期優良住宅は全ての項目の基準を満たす必要があるのに対し、住宅性能評価は評価を受けたい項目やレベルを選べる点も大きな違いです。
まとめ
住宅性能評価は住宅の性能や品質を誰にでも分かりやすく提示できるため、住宅購入者、住宅販売者どちらにとってもメリットの大きい制度です。
一方、省エネ計算等の専門的な知識が必要なうえ、建築確認や省エネ適判と並行して進める必要があるので、手間や時間がかかるのが難点です。
省エネ適判と住宅性能評価は信頼できる代行会社に依頼し、設計に意匠を凝らしたり顧客と打ち合わせをしたりする時間に充ててはいかがでしょうか。
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