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TOPコラム住宅性能評価ZEBとZEHの違いとは?2030年度を見据えた基準引き上げと実務の注意点を解説【2026年最新版】

ZEBとZEHの違いとは?2030年度を見据えた基準引き上げと実務の注意点を解説【2026年最新版】

2030年度を見据え、建築業界では省エネ基準の引き上げ対応が現実の実務課題になっています。国は、2030年度以降に新築される住宅・建築物について、ZEH・ZEB水準の省エネ性能の確保を目指す方針を示しており、設計・施工・開発の現場では、現行基準を満たすだけでは不十分になりつつあります。

しかし実務では、「ZEBとZEHは何が違うのか」「自社案件はどちらを前提に考えるべきか」「BELS申請や今後の基準引き上げにどう備えるべきか」といった判断に迷う場面も少なくありません。

本記事では、混同されやすいZEBとZEHの違いを整理したうえで、2030年度を見据えた基準引き上げの動向、BELS申請時の注意点、設計・申請実務で押さえるべきポイントをわかりやすく解説します。

ZEBとZEHの3つの違い

ZEBとZEHはどちらも、年間の一次エネルギー消費量の「正味ゼロ」を目指す点で共通しています。ただし、評価の物差しや計算ルールが異なります。

非住宅(ZEB)か、住宅(ZEH)か

ZEB非住宅建築物(オフィス、店舗、工場、学校、病院、ホテルなど)
ZEH個人の住居、共同住宅

ZEBはビジネスや公共活動に使われる、非住宅建築物を対象とします。一方、ZEHは個人の「暮らし」の場が対象です。

「寝泊まりを伴う施設」の分類には注意してください。原則的に、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)や寄宿舎は、住宅(ZEH-M)として扱われます。一方、介護保険法に基づく施設やホテルなどは「非住宅(ZEB)」となります。ZEBとZEHの判断は使用する計算プログラムの選定に影響するため、判断を誤ると大幅な手戻りが発生します。

評価単位が棟・テナント単位(ZEB)か、住戸単位(ZEH)か

ZEBの定義|環境省

エネルギー収支の計算範囲(単位)も、ZEBとZEHで異なります。

ZEB建物全体(棟単位)が原則
ZEH戸建住宅は1棟全体で評価共同住宅(ZEH-M)では「住戸単位」と「住棟全体」

大規模ビルにおいて、一部フロアのみ貸し出す場合や、特定の用途エリアだけを評価する「テナント(フロア)単位」での評価も、実務上は存在します。

評価対象エネルギーの違い

計算対象のエネルギー範囲にも違いがあります。

ZEBは、暖房・冷房・換気・給湯・照明の主要5設備に加え、エレベーターもエネルギー消費源として評価対象に含みます。一方、ZEHではエレベーターは評価しません。

コンセント負荷の扱いにも注意が必要です。

ZEHでは、家電製品の消費電力を「固定値」として計算に組み込みます。ZEBでは、室用途(事務所、飲食店、物販店舗等)ごとに設定された、標準的なOA機器等の機器負荷を踏まえて計算します。標準値は安全側(大きめ)に設定されることが多めです。実務では使用予定の機器の値に変更する、人感センサー付きコンセントを導入するなどの施策により、消費量削減を図ります。

2030年までのZEB/ZEHロードマップ

現在、ZEBやZEHの基準は厳格化の一途を辿っています。カーボンニュートラル達成の目標期限である2030年までに、特に注意しておきたいポイントを解説します。

【非住宅】中規模建築物の基準段階的引き上げ

中規模非住宅建築物の基準引き上げについて|国土交通省

300m2以上の中規模建築物は、段階的に基準の引き上げが予定されています。

2026年4月より適用される新基準は、下表の通りです。

用途一次エネルギー消費量(BEI)水準
工場等0.75
事務所等、学校等ホテル等、百貨店等0.80
病院等、飲食店等、集会所等0.85

※ 太陽光発電等の発電量のうち、自家消費分を含んで良い

続いて2030年度までに、以下の水準が義務化される予定です。

用途一次エネルギー消費量(BEI)水準
事務所等、学校等工場等0.60
病院等、飲食店等、集会所等ホテル等、百貨店等0.70

※ コージェネレーション設備の発電量のうち、自家消費分を含んで良い

中規模以上の非住宅建築物で基準引き上げが先行していますが、国は2030年度以降に新築される住宅・建築物について、ZEH・ZEB水準の省エネ性能の確保を目指す方針を示しています。したがって、小規模非住宅を含めた今後の基準見直しを前提に、早い段階から設備計画・外皮計画・用途整理を進めておくことが実務上重要です。

【住宅】ZEH水準の義務化

家選びの基準が変わります|国土交通省

住宅は2025年4月から省エネ基準適合が義務化されており、今後は遅くとも2030年度までに省エネ基準がZEH水準へ引き上げられる方向です。実務では、現行基準を満たすだけでなく、断熱等性能等級5や一次エネルギー消費量等級6相当を見据えた設計を進めておくことで、将来の基準引き上げや商品競争力の低下リスクに備えやすくなります。

基準引き上げに伴う実務上の注意点

基準が厳格化されることで、断熱材の選定や空調・照明の仕様、庇による日射遮蔽など、意匠設計の段階から省エネを織り込む必要があります。

また、省エネ計算項目の増大、審査機関との厳格な質疑応答も想定されます。工期を遵守するためには、設計初期段階からの緻密なスケジュール管理が不可欠です。

特に実務では、確認申請直前に省エネ性能を詰めようとすると、外皮性能の見直し、設備容量の再選定、屋上の太陽光レイアウト変更、用途区分の再整理が同時発生しやすく、意匠・設備・申請のすべてに手戻りが波及します。2030年度を見据えた案件ほど、「基本計画段階で性能の着地点を仮決めしておくこと」が、工期と事業収支を守るうえで重要です。

ZEBとZEHのランク・計算方法

ZEBとZEHには、太陽光発電(創エネ)の有無や削減率に応じた「ランク」が存在します。

ZEBとZEHの共通ランク

ZEBの定義|環境省

住宅脱炭素NAVI|環境省

ZEBとZEHはいずれも「Ready → Nearly → 達成形」の段階構造をとりますが、対象建築物や評価要件、表示名称の整理には違いがあります。まずは共通する考え方として、段階的に削減率を高めていく仕組みであると理解すると整理しやすいでしょう。

ランク一次エネルギー消費量削減率
Ready50%以上
Nearly75%以上
ZEB/ZEH100%以上

Readyまでは省エネのみで達成可能ですが、Nearly以上は創エネ設備の搭載が必須です。

OrientedはZEBとZEHで条件に違いがある

Orientedは、特別な条件のもと定義されるランクです。ZEBとZEHで適用対象が異なります。

◎ 非住宅

ZEB Orientedは、延べ面積10,000㎡以上の大規模非住宅建築物を対象に設けられた類型です。大規模建築物では建物規模に対して創エネ面積を十分確保しにくいケースも多いため、まずは高い省エネ性能の確保を重視する整理として理解すると実務上わかりやすいでしょう。

この原則に基づき、小規模ビルは太陽光発電設備を搭載しないと「ZEB Ready」止まりとなります。

◎ 住宅

ZEH Orientedは、都市部の狭小地(北側斜線制限等)や多雪地域など、太陽光パネルの搭載が地理的・物理的に不足する場合を想定し、設けられました。断熱と設備の工夫だけでZEH水準を目指します。

ZEBとZEHの計算方法

計算プログラムの入力方法も、実務上の課題になり得ます。

ZEHは建物全体を一括で計算できます。一方でZEBは「事務室」「廊下」「トイレ」「給湯室」など、室ごとに照明点灯時間や人員密度を設定しなければなりません。その上で、基準を満たし、どこまで削減できるかという工夫が必要です。

計算方法は、建物用途や申請手法に応じて使い分けが必要です。住宅では仕様基準と標準計算のいずれかで確認する場面がありますが、非住宅は計算による確認が基本となります。特に高い省エネ性能を狙う案件では、実態に即した入力ができる計算手法を選ばないと、設計の工夫が数値に反映されにくくなるため注意が必要です。

設計条件や目標性能によっては、建築物の実態をより適切に反映しやすい計算手法を選んだ方が、結果として審査対応や仕様調整を進めやすい場合があります。特に高性能化を狙う案件では、どの計算手法が最も合理的かを早めに見極めることが重要です。省エネ計算業務が負担であれば、外注という選択肢もおすすめです。

BELS申請とZEB/ZEH

BELSは建物の省エネ性能を評価する公的な制度で、ZEBやZEHの証明書として広く活用されています。

用途判定によって基準BEIが変わる

ZEBやZEHのBELS申請で注意しなければならないのが、用途の選択です。高齢者施設を老人ホーム(非住宅)とするか、共同住宅(住宅)とするかで、達成すべきBEIが大きく変わります。設計後半での手戻りを防ぐため、初期段階から省エネ計算の専門家を頼り、正しく判定するようにしましょう。

太陽光発電の評価

BELSにおける再生可能エネルギーの評価対象は、原則として敷地内(オンサイト)の設備です。評価方法や表示区分によって細かな条件はありますが、BELSの説明としては「オフサイト再エネも算入できる」と一般化せず、まずはオンサイトの太陽光発電やコージェネレーションの取り扱いを前提に整理する方が安全です。

複合建築物の取り扱い方

ZEBでは、複合建築物の取り扱いが悩ましいポイントです。要点を2つ、解説します。

按分しての計算が必要

複合建築物の非住宅部分は「非住宅版」を、住宅部分は「住宅版」のWEBプログラムを使い、個別にBEIを算出します。両プログラム間で断熱仕様やサッシ性能の入力値に齟齬がないか、整合性のチェックが求められます。

共用部の扱い

エレベーターやエントランスのエネルギー消費は、床面積比率等で住宅・非住宅部分に按分し、それぞれの計算に加算します。按分根拠を示す求積図等の資料の分かりやすさが、審査スケジュールの短期化に貢献します。

ZEB/ZEHに関するQ&A

ZEB/ZEHに関して、よくある疑問にQ&A形式で回答します。

Q1.2030年以降、ZEH水準を満たさない家は建てられなくなりますか?

国は、2030年度以降に新築される住宅についてZEH水準の省エネ性能の確保を目指す方針を示しています。現時点で個別案件ごとの最終要件がすべて確定しているわけではありませんが、少なくとも現行の省エネ基準ぎりぎりでは将来の基準引き上げに対応しにくくなるため、実務上は早めにZEH水準相当を見据えておくのが安全です。

Q2.300m2未満の小規模非住宅も基準は引き上げられますか?

はい。現時点では中規模以上の非住宅で先行して基準引き上げが進んでいますが、国は2030年度以降に新築される住宅・建築物についてZEH・ZEB水準の省エネ性能の確保を目指しています。小規模非住宅も将来の見直し対象になる前提で、早めに設備仕様や用途区分を整理しておくことが重要です。

Q3.BELSでZEB/ZEHマークをつけるには、必ず太陽光が必要ですか?

ランクによって異なります。たとえば、ZEB ReadyやZEH Oriented、ZEH-M Orientedは再エネ設備なしでも成立しうる一方、『ZEB』やNearly ZEB、『ZEH』やNearly ZEHなどは、再エネ導入を前提とする整理です。したがって、「BELSでマークを付けるには必ず太陽光が必要」と一括りにせず、目指すランクごとに要件を確認することが重要です。

まとめ

カーボンニュートラル社会の実現に向け、ZEB/ZEHは「あって当たり前の最低基準」となりつつあります。厳格化される基準を正しく踏まえ、施主に将来的な資産価値や性能を正しく説明できる提案力が、これからますます必要となるでしょう。

非住宅や複合建築物の省エネ計算、最新ルールに対応した申請業務は、煩雑で専門性を要します。スピーディーな着工のためにも、外部への計算業務委託もおすすめです。

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