LCCM住宅とは?ZEHとの違いや認定基準、最新の補助金制度を解説
2022年に改正建築物省エネ法が改正され、今まで以上に省エネ住宅の普及が促進されるようになりました。
その中でもLCCM住宅は、ZEH水準以上の省エネ性能やライフサイクルを通じてのCO2削減が注目されている省エネ住宅です。
この記事ではLCCM住宅の概要やZEHとの違い、最新の補助金制度を解説します。
認定を受けるコツも紹介しますので、LCCM住宅を検討している方は参考にしてください。
LCCM(エルシーシーエム)住宅とは
LCCM住宅とは、住宅の建築時・運用時・廃棄時において省CO2に臨み、さらに再エネ設備でエネルギーを生成することで、住宅のライフサイクルで発生するCO2の収支をマイナスにすることを目指した住宅です。
引用:国土交通省「ご注文は省エネ住宅ですか?」
「ライフサイクルカーボンマイナス住宅」とも呼ばれ、一般社団法人住宅・建築SDGs推進センターが運営しています。
LCCM住宅とZEH住宅の違い
LCCM住宅とZEH住宅の大きな違いは、省CO2への取り組み体制です。
ZEH住宅は暮らしていく中で消費する年間エネルギー消費量のゼロ以下を目指す取り組みです。
引用:経済産業省資源エネルギー庁「ZEHとは」
一方、LCCM住宅は年間ではなく、建築時から廃棄時まで住宅のライフサイクルすべてで省CO2の削減を実施することでCO2の収支マイナスを目的にしています。
そのためLCCM住宅はZEH住宅以上に、省CO2の効果が高い省エネ住宅だと評価されています。
LCCM住宅の普及が促進されている理由
近年国内でLCCM住宅の普及が促進されているのは、2050年までにカーボンニュートラルを実現するためです。
国内だけでなく、世界各国でCO2などの温室効果ガスによる地球温暖化が問題になっており、その中でも住宅・建築物部門から排出するCO2が全体の3分の1を占めているといわれています。
引用:環境省脱炭素ポータル「ZEBをはじめとする省エネ建築物の必要性とそのメリット」
そのため住宅で生活する際に排出するCO2だけでなく、住宅に係るCO2排出量のトータルでマイナスを考えるLCCM住宅の価値や需要が高まっています。
LCCM住宅を取得するための2つの認定条件
LCCM住宅の認定を受けるには、下記のどちらかを満たすのが必須です。
・LCCM適合判定ルートで適合を取得する
・CASBEEルートで高ランクを取得する
それぞれのルートについて、詳しく解説します。
LCCM適合判定ルートで適合を取得する
LCCM適合判定とは日本サステナブル建築協会が開発したツールで、下記のライフサイクル段階別に条件や項目が設定されています。
①建設に係るCO2の排出量
②修繕・更新解体に係るCO2排出量
③居住時のエネルギー・水に係るCO2排出量
それぞれの項目に、CO2削減率の具体的な数値や評価条件が定められているのが特徴です。
たとえば木質系の住宅を建てる場合、①の段階におけるCO2対策として下記のような項目があります。
引用:IBECs「LCCM 住宅部門の基本要件(LCCO2)適合判定ツール 入力マニュアル」
それぞれの項目の計算結果とともに、基本要件に適合しているか判定され、CO2排出量が0%以下の場合は「適合」、0%を超える場合は「不適合」です。
引用:IBECs「LCCM 住宅部門の基本要件(LCCO2)適合判定ツール 入力マニュアル」
CASBEEルートで高ランクを取得する
CASBEEは建築物や都市などに係る環境性能を多角的に評価するツールで、LCCM住宅の認定に使用するのはCASBEE-戸建(新築)です。
認定には、下記2つの条件を満たす必要があります。
①環境効率ランクSまたはA
②ライフサイクルCO2ランク緑星5つ以上
引用:住宅・建築SDGs推進センター「CASBEE-戸建て」
評価作成者の対象は、運営元であるIBECs(住宅・建築SDGs推進センター)に登録されているCASBEE-戸建て評価員のみです。
LCCM適合判定ルートと同じく、建築・居住・修繕・解体まで住宅のライフサイクルを通じて省CO2を取り入れているかが評価のポイントです。
LCCM住宅の認定を受けるための3つのコツ
住宅のライフサイクルを通じたCO2削減が求められるLCCM住宅は、省エネ基準適合住宅やZEH住宅などの省エネ住宅よりも認定基準が細かく、厳しく設定されています。
そこで、認定を受けるためのコツを3つ解説します。
省エネ性能の高い設備の導入
居住時のエネルギー消費量の削減には、他の省エネ住宅と同じく、省エネ性能の高い設備や材料の採用が必須です。
強化外皮基準を満たす断熱材やサッシ等を採用して断熱性能を向上させる、少ない電力で効率的な運転ができる冷暖房を設置するなど、住宅の省エネ性能を高めるものを選びましょう。
自然エネルギーの有効活用
CO2削減には、使用するエネルギーを太陽光などで住宅で生成する創エネ技術が重要です。
さらにLCCM住宅では、日中に自然採光で明かりを確保できるような窓の位置や、自然の風で通気性をよくする設計など、発電以外にも自然エネルギーを有効活用できる仕組みづくりが大切です。
CO2の発生が少ない材料の使用
建築時のCO2削減も求められるLCCM住宅では、材料の加工や輸送時に発生するCO2も削減対象です。
鉄骨造やRC造と比較すると木造住宅は建築時のCO2排出量が少なく、国産の木材を採用すれば輸送時のCO2の削減も可能です。
そのため近年では、国産木材を使用した木造住宅の建築が推進されています。
LCCM住宅認定の手続きの流れ
LCCM住宅の認定には、IBECsの認定を受ける必要があります。
LCCM適合判定ルートを利用する場合の流れは、下記のとおりです。
引用:IBECs「LCCM住宅認定フロー」
CASBEEルートを利用する場合は、先にCASBEEの認証を受け、CASBEE認証書の交付を受けてからIBECsに申請をおこないます。
LCCM住宅の認定を受ける3つのメリット
認定を受けることで得られるメリットを、3つ解説します。
住宅で使用する光熱費を抑えられる
エネルギーの消費量を削減できれば必然的に光熱費も抑えられるため、家計の負担を軽減できるのがメリットです。
自然の風や太陽光を活用した設計も意識しているので、ZEH住宅以上の光熱費削減が期待できるでしょう。
一年中快適な室内環境を維持しやすい
断熱性能が高いLCCM住宅は外からの熱が室内に侵入しにくく、一年中快適な室内環境を維持しやすくなります。
住宅全体をすっぽり覆うように断熱するため、エリアごとの温度差も生まれにくく、冬場の温度差によるヒートショックのリスクも軽減できます。
地球環境への負荷を軽減できる
住宅の運用時だけでなく、建築時から廃棄時までライフサイクルを通じてCO2を削減するのが特徴であるLCCM住宅は、省エネ基準適合住宅やZEH住宅を超えたCO2削減効果が期待できます。
地球環境への負荷を軽減し、カーボンニュートラルの実現に近づけるでしょう。
LCCM住宅を取得する際のデメリットや注意点
LCCM住宅は高性能な省エネ設備等が不可欠なので、省エネ基準適合住宅など一般的な住宅と比較して導入コストがかかる点がデメリットです。
また、住宅のライフサイクルを通じたCO2の削減や、自然エネルギーの有効活用など、他の省エネ住宅とは異なる性能も求められており、建築士は専門的な知識や経験が求められます。
また、初期コストを抑えるなら、行政が運営する補助金制度の利用を検討しましょう。
【2025年度】LCCM住宅の取得に使える最新補助金制度
LCCM住宅の建築コストを抑えるのに利用できる、最新補助金制度を解説します。
子育てグリーン住宅支援事業
子育てグリーン住宅支援事業は、グリーン住宅支援事業者と契約してGX志向型住宅や長期優良住宅、ZEH水準住宅を新築する際に補助金が支給される制度です。
長期優良住宅やZEH水準住宅は子育て世帯または若者夫婦世帯が対象ですが、GX志向型住宅は世帯や年齢を問いません。
GX志向型住宅は、クリーンエネルギーを活用してエネルギー消費量ゼロを目指す次世代型省エネ住宅として、ZEHよりも高い水準が設定されています。
断熱等級 | 一次エネルギー消費量削減率(再エネを除く) | 一次エネルギー消費量削減率(再エネ含む) | |
ZEH水準住宅 | 5以上 | 20%以上 | 100%以上 |
LCCM住宅 | 5以上 | 25%以上 | 100%以上 |
GX志向型住宅 | 6以上 | 35%以上 | 100%以上 |
基本的にLCCM住宅はZEH水準住宅の要件を満たしているため、ZEH水準住宅と同額の補助を受けることができます。
各補助対象住宅の補助額は、下記のとおりです。
引用:子育てグリーン住宅支援事業「注文住宅の新築」
交付申請期間は予算上限に達するまでで、遅くても2025年12月31日には終了予定です。
利用を検討している場合は、早めの手続きをおすすめします。
LCCM住宅整備推進事業は令和5年度に終了
2023年度まで設けられていた「LCCM住宅整備推進事業」では、1戸につき140万円の交付を受けられました。
参照:国土交通省「令和5年度LCCM住宅整備推進事業」
2025年度はLCCM住宅を支援する補助金制度は設けられておらず、その代わりにGX志向型住宅を推進する体制が整えられたといえます。
LCCM住宅の建築で補助金制度を利用するなら、ZEH水準住宅として申請するのが楽ですが、省エネ性能をさらに高めてGX志向型住宅で申請し、高い補助額を受け取るのもひとつの手でしょう。
まとめ
LCCM住宅は、住宅のライフサイクルを通じて消費するカーボンのマイナスを目指す住宅です。
残念ながら、しろくま省エネセンターでは現在のところLCCM住宅に関する業務は行っておりませんが、2050年のカーボンニュートラルを実現するため、今後も普及の促進が予想されています。
LCCM住宅の認定には厳しい基準をクリアする必要があり、省エネ技術に関する専門的な知識が必要不可欠ですので、本記事を参考に理解を深めていきましょう。
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